24日にペロシ合衆国下院議長が、トランプ大統領の弾劾調査を開始することを表明したが、米国株式市場は冷静だ。
米中貿易戦争の方が重要というのもあるが、下院で弾劾訴追されても、上院の弾劾裁判で2/3以上の賛成を得られなければ罷免されないので、弾劾あっても罷免は無いという見方が強い。そして、ブックメーカーのオッズを見れば「弾劾されても大統領選で勝利するのはトランプ」という構図が見えてくる。
オンライン予測市場PredictItでは下図の通り、「2019年末までに弾劾訴追されるか」についてのオッズが急上昇している。(執筆時点で本家サイトがダウンしていたのでブルームバーグの図を引用する。)
PredictItでは株式市場のように取引され、最大1ドルの価格で売買される。日本時間9月24日時点で42セントであり、2019年末までに下院で弾劾訴追されれば、賭けた人は1ドルを受け取れることになる。
オッズ比で言えば2.38倍であるが、この42セントというのは「2019年末までにトランプ大統領が下院で弾劾訴追される確率が42%」であることと等価である。
一方で、「2020年の大統領選で誰が勝利するか」についてのオッズは寧ろトランプ大統領の再選予測が強まっている。
比較のため、ここではoddscheckerを利用する。前回2019年2月28日時点のデータを紹介した時は、トランプ大統領のオッズが2/1(2倍)、民主党候補者の倍率は一番人気のカマラ・ハリス氏でも13/2(6.5倍)と高い状態だった。
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あれから7ヶ月経った現在のオッズが以下の通りである。トランプ大統領は5/4(1.25倍)と以前よりも倍率が低くなっている。これは民主党の候補者の見立てがある程度固まってきたことに起因するだろう。
前回は民主党からの候補者が乱立していたが、現在はエリザベス・ウォーレン氏が3/1(3倍)と有力になってきており、現時点では「トランプかウォーレンか」という賭けが濃厚になっているからである。
実際に弾劾訴追されればまた状況は変わってくるだろうし、民主党候補者も実際に誰がなるかはまだまだ分からないが、現時点では未だトランプ大統領再選シナリオがマーケットの予想であると言える。
参考文献:Bloomberg, “Trump’s Impeachment Odds Double to 42%, Online Betting Shows”, 25 Sep 2019