産業革命以降、地球の平均気温は1度上昇しており、その要因の一つに石油などの化石燃料の燃焼があるということに反対する研究者は殆どいない。しかし、化石燃料の燃焼が「どの程度」地球温暖化に寄与しているかということについては同意が得られていない。
リーズ大学の水資源のリズワン・ナワーズ助教授とサリー大学の水工学のアデル・シャリフ教授が自身の研究などを含めたサーベイをThe Conversationに載せている。非常に興味深い内容なので要約する。
化石燃料の採掘により、地球を内部から加熱することで気候変動に寄与している可能性がある(The Conversation)
- 地球温暖化の原因は二酸化炭素よりも熱放射が重要である
- 地球の内部からの熱が気温上昇に寄与しており、層状に埋蔵している化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の隙間が断熱ブランケットの役割を果たしている(化石燃料の採掘によって地球の核の熱が表面に伝わりやすくなってしまう)
- 化石燃料が採掘されている場所ほど温暖化が早く進んでいる傾向
- サウジアラビア、アラビア湾、メキシコ海、北海、アラスカは世界平均の3~6倍のスピードで温暖化が進んでいる
- 1978年以来、北極では10年ごとに0.6度ずつ気温が上昇しているが、南極では0.1度ずつしか上昇していない(北極圏では400以上の油田・ガス田が開発されている)
- 炭田の歴史が長いイングランド北東部(ゲーツヘッド、ニューカッスル)ではヒートアイランド効果が周辺の郊外よりも大きい
- 鉱山で組み上げられた地下水も地球の内部の熱により温度が高い
補足
化石燃料は昆虫の死骸などの堆積・変性によってできたものと言われるが、時代によってできるものが異なるので、層状に発生する。これにより、住宅の断熱工法などを見て分かる通り、化石燃料と化石燃料の間の空間が断熱効果を発揮し、地球内部の熱を地表まで運びにくくするというのが最近の研究で分かってきている。
2の研究(Bo Nordell, Bruno Gervet, 2009)では、「地球温暖化とは空気・地面・水に熱が蓄積されることによって起こる」とした上で、1880-2000年の熱放射が蓄積された熱の74%に達すると推定しており、化石燃料の燃焼を抑制しても効果が薄いと主張している。
以前から化石燃料の燃焼が問題視されて、採掘を抑えることが主張されてきたが、著者らはこれらの事実を元に、より緊急性が高まったと警告を発している。