プラスチックが環境に悪影響を与えるとして利用を削減する動きが世界的に広がっており、プラスチック包装を減らそうという動きも進んでいる。日本で多く見られるような過剰包装は確かに問題だが、「パッケージフリー」といった動きはやり過ぎで逆効果だと指摘されている。
以下の論考は、ブルーネル・ユニバーシティ・ロンドンのオペレーション&サプライチェーンマネジメントの助手Manoj Dora氏および、同大学の環境管理の講師Eleni Iacovidou氏によるものである。
食品廃棄物を減らし環境を守るのに何故ある程度のプラスチック包装が必要なのか(The Conversation)
- 食品は通常、生産地から貯蔵施設への移動、保管、販売店までの輸送、購入後の貯蔵と各工程で時間がかかる
- 食品のプラスチック包装は流通や貯蔵において新鮮度を保つために利用される
- EUでは食料生産量の20%が食品廃棄物となっており、その50%以上が家庭で、約20%が加工中に発生する
- 加工・流通・家庭それぞれにおいてプラスチック包装は食品廃棄を減らすための必要悪かもしれない
- 例えば、キュウリを1.5gのプラスチックフィルムで包めば保存期間が3日から14日に伸びる。ビニール袋やトレイでブドウを販売すると、店頭での廃棄が20%削減される。
- Zero Waste Scotlandの推定では、食品廃棄による二酸化炭素排出量は、プラスチックによるものより多い
- 距離が短い食品サプライチェーンの構築やバイオベースの包装の研究など、抜本的な解決策は簡単ではなく、現時点ではプラスチック包装を排除すべきではない
補足
プラスチック廃棄が排出する二酸化炭素よりも、食品廃棄に伴う二酸化炭素排出量の方が多いというのがポイントである。
例えば、スコットランドの家庭から年間456,000トンの食品廃棄物が出ているが、これは約190万トンの二酸化炭素排出に寄与し、224,000トンのプラスチック廃棄物から出た二酸化炭素排出量の3倍に当たる。
流通過程で食品にダメージを与えるので、プラスチック包装の有無が食品の日持ちを大きく左右する。記事中のキュウリの例など、包装の有無が大幅に影響する食品も存在するので、ある程度のプラスチック包装は環境保護に有効というのが記事での主張である。
プラスチック包装を利用しなくても流通が可能な食品も存在するが、その種類は限定的であり、かつ、流通経路が短いケースが殆どである。
生産地と消費地の距離を短くすることも簡単ではなく、代替となる包装材の開発が進むまではプラスチック包装は今後も使われ、それはある程度「必要悪」として存在し続けるだろう。