最近、ビヨンド・ミート(Beyond Meat)<NASDAQ : BYND>のIPOの成功や、競合でこちらもIPOが近いと言われるインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)など植物由来の人工肉を扱う新興企業が活況である。
活況の背景には、環境なり倫理なり健康なり様々な理由があり、その思想性を背景とするビーガンは増えつつある。一方でヴィーガンはその強い思想から栄養成分の偏りが指摘されがちである。
こうした背景もあり、ビヨンド・ミートとインポッシブル・フーズの栄養について取り上げる記事が増えているようだ。
例えば、元米国農務長官でアスペン研究所の議会プログラムを運営するダン・グリックマン氏は、CNBCに対して「(ビヨンド・ミートの)植物性由来肉が本物の肉よりも健康的であるという物的証拠が無い」と意見を述べている。
グリックマン氏は、ビヨンド・ミートの人工肉にエンドウ豆などをはじめとしてタンパク質が含まれているとしながらも、栄養成分について十分なことが分かっていないと指摘する。
米国は食事を原因とする病気が死因の第一位であり、グリックマン氏は「栄養学の欠如」を深刻視している。
また、cnetもインポッシブル・フーズとビヨンド・ミートの人工肉の比較をしている。これによると、インポッシブル・バーガーは多くの有機成分が含まれているが、ビヨンド・バーガーは欠如していると指摘している。
公式サイトによるとビヨンド・ミートは
- No-GMO(遺伝子組換え作物を利用しない)
- No-Soy(大豆を利用しない)
- No-Gluten(グルテンフリー)
を売りにしている。
大豆を利用しないのがセールスポイントになるのは、米国では「大豆が身体に悪い」というイメージが少なからずついているからだ。その背景に(1)米国では大豆アレルギーが多い、(2)米国では遺伝子組換え大豆が多い、(3)摂りすぎるとホルモンバランスが崩れる、といった理由のようで、大豆を避けるヴィーガンも少なくないようだ。
勿論、どんな食物も摂りすぎが良くないのは当然で、だからこそ栄養学の知見が言うように「様々な物をバランス良く食べるべき」となるわけだが、それはともかく、ビヨンド・ミートは「エンドウ豆」を主成分としてタンパク質を豊富に含むようにしている。
参考:Beyond Meat — Product(公式サイト)
一方でインポッシブル・フーズは大豆を主成分とし、日本でも流行しつつある大豆ミートと栄養成分としては近いようである。
参考:Impossible Foods — FAQ(公式サイト)
ヴィーガンコミュニティの中には大豆を忌避するケースがあるようだが、一方で「健康食品としての豆腐ブーム」など大豆を健康食品として好む人も増えており、両社の製品やコンセプトは似ているようで、ターゲットが実は異なるというのが興味深い。(コンセプトとして共通するのは、両社とも見た目や調理工程、味にこだわりを見せている点である。)
ビヨンド・ミートの方が栄養成分に問題があると指摘されるのは、ビタミンやミネラルの含有量もあるが、アミノ酸スコア(必須アミノ酸の含有比率の評価値 )において大豆よりもエンドウ豆の方が評価が低いといった点も大きい。
エンドウ豆が悪いというわけではなく、様々な食品と組み合わせて摂る事で9種類の必須アミノ酸をバランス良く補うのが普通である。だからと言って、アミノ酸スコアが高いからと言って大豆だけ食えば良いというわけでもないので悪しからず。