豚肉価格の上昇が少なくとも2020年まで続く可能性

日本でも拡大の可能性が指摘されているアフリカ豚コレラだが、最も猛威を奮っているのが中国で、2018年8月に確認されて以来、中国では少なくとも129例の症例が確認されている。これについて米国の各専門家は、中国の「豚肉危機」に伴う米国での豚肉価格の上昇が長く続く可能性を指摘している。

JPモルガンのアナリストであるトーマス・パーマー氏は、「中国での豚コレラウイルスの封じ込めができていない」ことと「家畜の交替に最低20ヶ月はかかる」という予想により、国外での豚肉需要の増加が少なくとも2020年まで続くと予想している。

豚肉およびベーコンの卸売価格が急騰は、サンドイッチやハンバーガーなどのレストランへの利幅に影響を与える他、幅広く米国の消費者に影響を与える可能性がある。

シカゴのArrow Stream社のデビッド・マローニ氏は、豚肉の季節的なピークを迎える年後半には、現在の価格水準から40%以上上昇する可能性を指摘している。

飲食店はベーコンの原料となる豚の腹肉の価格が注意深く監視しているといい、一部のファストフードチェーンでは細身の豚先物のフォワード取引で価格上昇をヘッジしているという。(CMEでは豚腹肉の先物取引がされなくなったので、代わりに細身肉が利用されている。)

豚の腹肉価格の変化率(前年比)
出典:CNBC

上図の腹肉価格の変化率(前年比)を見ると、価格は長期的に上昇傾向にあり、過去1年で見てもトレンドラインを超えそうな勢いである。

中国での豚肉の供給減少の影響は貿易にも現れており、昨年中国は米中貿易戦争の報復関税として米国の豚肉に25%の追加関税(トータルで60%超)を課しているが、それでも尚中国は米国との豚肉取引を再開している兆候が見られるという。

一方で、価格下落圧力もいくつか存在する。アイオワ州のKerns&Associatesの業界エコノミストであるスティーブ・マイヤー氏は、冬の間、体重の軽い豚を出荷する中国業者が多かったと指摘している。これは「病気になる前に早めに出荷する」という意図の現れであり、短期的には豚肉供給を下支えするのではないかと見られている。

他にも、中国では潜在的には冷凍豚肉の大量の在庫があると考えられており、豚コレラによる豚肉消費を避ける動きが広まれば、牛肉など代替的なタンパク源にシフトする可能性も指摘される。

参考文献

CNBC, “Pork prices could jump this year, stay elevated into 2020 due to China’s pig crisis”, May 1, 2019

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