株に対する古くからの有名な格言としてSell in May(5月は売れ)がある。5月からの6ヶ月は歴史的にパフォーマンスが低いというアノマリーを指している。一方で買いとして良いとされるのがハロウィンアノマリーである。
しかし、Sell in Mayは過去7年間のうち6年においては成立しておらず、最近においては信用できないアノマリーだという評価が多い。(「アノマリーを信用する」という言葉自体に違和感があるが。)
ZeroHeageは、1~4月が強気相場であったケースという「特定の条件」下においては「5月は売れ」に正当性があるのではないかと指摘している。筆者としてはかなり無理のある結論だと思えるが、影響力があるメディアの議論なのでコメントしておこう。
下図は、ダウ平均株価において1~4月のリターンが高かった上位11年とその年の5~12月のパフォーマンスを示している。1975年の27.3%が最も高く、今年2019年の4ヶ月間のパフォーマンスは歴代で4番目の高さである。
年 | 1~4月のリターン | 5~12月のリターン |
1975 | 27.3% | 3.3% |
1987 | 19.1% | -14.3% |
1943 | 18.6% | 0.7% |
2019 | 17.4% | ? |
1967 | 17.0% | 2.6% |
1983 | 16.9% | 0.3% |
1930 | 16.1% | -38.4% |
1998 | 14.6% | 10.6% |
1954 | 13.9% | 27.3% |
1991 | 13.7% | 11.1% |
1933 | 13.2% | 27.3% |
平均 | 16.9% | 3.0% |
図:1~4月のパフォーマンスが高かった上位11年とその年の5~12月のパフォーマンス(ダウ平均株価)
出典:ZeroHedge, Is It Time To ‘Sell In May’ This Time?, May 1, 2019より再作成
これらの年の1~4月の平均リターンは16.9%に対し、残りの8ヶ月の平均リターンはわずか3.0%であり、1930年や1987年のような大惨事と言えるパフォーマンスも存在する。
記事では「科学的というには単純すぎるように見えるかもしれないが」と留保しているが、こうした特定条件下(1~4月が高パフォーマンス)においては”Sell in May”に正当性があるのではと主張している。
筆者としては、これほどばらつきが大きい収益率において平均を出すことに殆ど意味は無いと見ている。
災害的なパフォーマンスを示す時もあるというが、1987年はブラックマンデーが起きた年であり、1930年は前年の金融恐慌の余波もあってマーケットが非常に敏感な年でもある。一方で27%を超える1954年や1933年などもあり、この「条件」は統計的には何の意味も無いように見える。