昨年2018年12月に成立した「水道法の一部を改正する法律案」(通称、改正水道法)は、報道ではPFIの一種であるコンセッション方式(運営権を民間事業者に設定し、施設の運営を委託する仕組み)の規定が強調されている。
不安を煽って自民党を叩きたいという一部メディアの意向が透けて見えるが、より重要なのは水道事業の広域化である。
そもそも改正水道法がつくられたのは、以下の水道事業が抱える3つの問題を解決するためである。(みずほ銀行産業調査部, 2019)
- 水需要の減少
- インフラの老朽化及び更新の遅れ
- 水道事業に携わる職員数の減少
1.は、今後の人口減少に伴って2050年には2000年頃のピークの2/3にまで水需要が減少すると見られている。
2.は、管路更新率が2016年度で全国平均で0.75%、法定耐用年数を超えた管路延長の割合は14.8%と予算などの観点から水道管の更新が追いついていないという問題である。
3.は、30年前と比較して職員数が3割以上減少している上、高齢化によって技術継承が課題となるなど、人材の問題である。
これらを解決する上で官民連携を行い業務を効率化するというのも一つの解決策として提示されているが、より本質的なのは複数の市町村の水道局の統合である。
人口減少が特に深刻な課題となっている地域は、山間部や豪雪地帯など水道管の管理にコストがかかり、人口密度が低い地域が多い。こうした地域では、一人当たりの管路総延長距離が非常に長い。都市部では短い水道管で多くの人口をカバーできるが、田舎になればなるほど長い水道管が必要となる傾向がある。
こうした水道管も老朽化が進んでいるので交換しなければならないが、更新するにしても自治体で負担するには多額の税金が必要となる上、ましてや水道料金に転嫁しようとしたら非現実的な水道料金になってしまう地域も出てくる。
最も簡単なのは、複数の市町村、場合によっては県レベルで水道局を統合し、統一的な予算で水道管を交換していく方法である。都市部の水道料金を少しずつ上げることで、過疎地の水道インフラの維持・更新コストをより大きな人口で広くカバーするのだ。
水道局を統合すれば、3.の人材不足の問題も是正される。但し、自治体ごとに水道インフラの管理システム等が異なるケースも多いので、例えば2つの水道局を1つに統合したからといって、単純に必要な人材が半分になるわけではない。
こういう意味では、かなり広域で統合しない限りは人材問題の抜本的な改善にならないと予想され、それでも足りない部分を官民連携などで補うというのが可能性として高いシナリオだろう。
参考文献
みずほ銀行産業調査部「改正水道法のポイント ~国内水道業界への示唆~」(PDF注意)
総務省「水道事業及び下水道事業における 抜本的な改革の方向性(総論)」(PDF注意)