ハノイ人民委員会は「ハノイで2019年から21年の間に社会保険と雇用保険に加入する人の数を増やす」ためのプロジェクトを承認した。この理由について同委員会管轄のHanoi Social Insuranceのグエン・ドゥク・ホア氏は、市の郵便局などの協力しながら住民向けに1,300以上のセミナーやトークショーを開催している。
公的な保険は社会福祉システムを支える重要なものであり、ベトナムにとっても国民の生活を安定させる上で重要である。(年金しかり健康保険しかりである。)それ故、ベトナムも皆保険を目指しているが、現時点では社会保険や雇用保険の加入率は低く、前者は全労働者の35.2%、後者は32.2%といずれも1/3程度に過ぎない。
雇用保険については企業側が対象となる労働者の為に加入することが義務付けられているので、今後は違反企業を定期的に検査し、違反者には厳罰をくだす方向で動きが進んでいる。
一方で社会保険についてはベトナムでは加入が任意であり、加入率を伸ばすことは簡単ではない。それには大きく分けて以下の2つの問題があるとホア氏は言う。
- 社会保険システムのメリットを理解していない
- 社会保険システムの存在を知らない
入る意義が見いだせないだけなく、存在すら知らない人も多いというのが現状であるという。多くのセミナーが開かれているのは、システムを周知させるための社会教育としても意味合いが強い。
これは後発発展途上国で少なくない「銀行口座の必要性」を認識させるための教育と性質が似ているように思える。日本人なら「銀行口座が分からない」とか「銀行口座が必要な理由が分からない」という感覚を持つ人は殆どいないと思われるが、ベトナムではこうした広義の社会インフラの普及がまだまだこれからというのは知識として重要である。
冒頭のプロジェクトでは2021年までに全労働者の40%に加入させることを目標としている。
参考文献:Viet Nam News, “Hà Nội strives to give social insurance to all workers”, 27 Jun 2019