要約
- 現行のエンジンシステムではメルセデス&ルイス・ハミルトンが圧倒的
- フェラーリのチームマネジメントは上向きで、タイヤのレギュレーションの変化も後押し
F1の世界にもエコの流れがやってきており、2014年から内燃機関にハイブリッドシステムを用いたV型6気筒1.6L直噴シングルターボエンジンを採用している。それ以来、2014~2018年とメルセデスがコンストラクターズ・チャンピオンになり、ドライバーズチャンピオンも2014, 2015, 2017, 2018年がルイス・ハミルトン、2016年がニコ・ロズベルグとメルセデスの独擅場であり、セバスチャン・ベッテルは長らく年間チャンピオンから遠ざかっている。
そのせいもあってブックメーカーでも、ドライバーズ・チャンピオンの一番人気がルイス・ハミルトン(11/8:日本式で1.38倍)、コンストラクターズ・チャンピオンに至ってはメルセデスのオッズが1を切っている。
しかし、2014年以来、フェラーリのコンストラクターズポイントは4位、2位、3位、2位、2位と上向きである。
2018年のフェラーリの何が問題だったかといえば何よりもタイヤマネジメントである。2011年からピレリ<PIRC:IM>1社がF1のタイヤを供給しており、2018年はスーパーハード(SH)~ハイパーソフト(HS)まで7種類のコンパウンドが存在し、ピレリがレース毎に3種類を選択するという形だった。
結果的に2018年はタイヤマネジメントが勝負を大きく左右し、ベッテルの能力というよりかは、フェラーリのコンストラクターズとしての戦略の問題が多かった。
2019年は昨年の評判の悪い7種類を5種類に減らし、同様にレース毎に3種類というルールに変わった。その対応は以下の通りである。
C1~C5が今年利用されるタイヤで、2018年のレースで使われたタイヤは「2018」と表記している。黄色で示した部分は既に利用タイヤが発表されているレースである。昨年、非常に評判が悪かったスーパーソフトと、昨年全く指定されなかったスーパーハードを除外したのが今年のコンパウンドである。既に発表されている分は基本的に昨年の指定を踏襲している様が伺える。それを元に筆者が予測したのが緑色の部分である。
筆者としては、スーパーソフトが無い分、全てのレースで使われるC3(ソフト)タイヤが鍵となると考えている。そして、2019年シーズンの結果を予想する上で重要なのが先日行われたプレシーズンテストであるが、コンパウンド別のタイムを見ると、
と、ベッテルとハミルトンの壮絶な争いが伺えるが、C3でベッテルが最速ラップタイムを記録していることは大きい。
そして、テストの最終結果でもベッテルが1位となっており、同じくフェラーリのルクレールも3位となっていることは非常に期待できる。
もちろん、これだけではフェラーリ躍進の理由にはならない。昨年もプレシーズンテストは1位・2位ともにフェラーリであり、ルイス・ハミルトンにいたっては8位だったからだ。
それでも筆者が大方の予想に反してフェラーリを推すのは、
- タイヤのコンパウンドの削減(タイヤマネジメントの多様性が減る)
- ベッテルのC3、C5での速さ
- 最速ラップタイムの追加ポイント
という理由があるからだ。
1.については、タイヤの種類が減れば、それだけタイヤマネジメントの選択肢が減る上、昨年評判の悪かったスーパーソフトが無いので、タイヤ毎の得意不得意の差、タイヤマネジメントの差が出にくく、チームとしての戦略差が生じにくいからだ。
2.については、前述の通りC3は全てのレースで利用されることが予想され、C3を得意とすることが鍵になると考えられる。また、2018年のベッテルは後半に失速したが、後半はC5が利用可能なレースが多いと予想される。
後半では昨年、日本グランプリとブラジルグランプリで 6位に留まったことから見れば、ベッテルは特に2018年のスーパーソフトタイヤを不得意としていたことが伺える。今回はスーパーソフトタイヤは無く、ソフト(C3)が同等の扱いになっていると予想されるので、昨年よりもレース結果が安定するのではないかと見ている。
3.については、先日承認されたばかりのルールで、レースで上位10人に入った場合にのみ、最速ラップタイムに対して追加ポイントが与えられる。このルールは1950-1959年のF1グランプリ以来のこと(当時は計測技術から運用に問題があった)で、プレシーズンテストの結果から見れば、ベッテルに若干ながらアドバンテージを与えるものになるだろう。
問題はC4が中心となると予想されるレースで大きくポイントを落とさないかであるが、筆者としては総合的に見てベッテルおよびフェラーリの年間チャンピオンの可能性は十分にあると見ている。