ようやく出てきたマレーシア航空売却検討案(2019年9月18日追記)

マハティール首相が国有航空会社マレーシア航空の運行停止・売却・リファイナンスを調査・検討していると延べた。

Mahathir Weighing Shutdown or Sale of Malaysia Airlines
【マハティールはマレーシア航空の運行停止か売却を検討】(Bloomberg)

筆者から言えば「10年遅い」という感覚であるが、これまでの問題の先送り体質が続いたマレーシア政府から考えれば、やはりマハティール首相の行動力は良くも悪くも突出している。

2014年に立て続けに2度の事故を起こし、特に3月8日のマレーシア航空370便墜落事故の方は、航空機が消息したという点で大きなニュースになったことは記憶に新しい。2017年に捜索を打ち切り、2018年4月にマレーシア政府は最終報告書を提出したが、ブラックボックスも見つかっていないなど不明点も多い。ハイジャック説が出されるほど不可解な点も多い。先日事故から5年を迎えた。

マレーシア国営投資会社カザナ・ナショナルがマレーシア航空の親会社であり、事故を受けて2014年末に上場廃止としたが、現在も経営状況が良くなったとは言い難く、カザナ・ナショナルが2018年に経常損失62億7000万リンギット(約1,700億円)を計上したことで売却案が浮上したと見られる。

以下は1995~2013年、つまりアジア通貨危機前から上場廃止前の会計年度までのマレーシア航空の純利益(純損失)を示している。1997年の通貨危機で経営状況が悪化し、2003年に黒字化したが、再び赤字傾向になり、金融危機で赤字が広がっている。

マレーシア航空の上場廃止以前の純利益(純損失)推移
出典:マレーシア航空決算書類より筆者作成

一度黒字化したものの再度赤字に転落した最たる理由はエアアジア<MYX:5099>の登場である。現行の経営体制になったのは2001年で、当時DRB-HICOM(元マレーシア重工業公社)の傘下で経営破綻したエアアジアを、ワーナーミュージックのアジア部門のトニー・フェルナンデスが僅か1リンギットで買収したことから始まる。

エアアジアは買収から僅か2年で黒字化し、LCCの代表企業として成長していった。

一方でマレーシア航空はエアアジアの躍進が面白くなく、数々の嫌がらせをしたというのはマレーシアでは有名な話である。最もわかりやすいのがエアアジア専用に与えられていたKLIA2(クアラルンプール国際空港第2ターミナル)で、当初はプレハブのような酷く簡素な建物で冷房も効いておらず、更に第1ターミナルから移動するためには隣の空港だというのにシャトルバスで30分近く乗らなければならないという状態だった。

結局、格安航空を売りにするLCCの顧客は、それくらいの嫌がらせで利用を諦めるわけではなく、マレーシア航空の業績が改善するには至らず、2010年に新しく設備が整ったKLIA2を作り直すことになり、2014年からメインターミナルと遜色ない現代的な空港になっている。(空港間移動も10分程度で可能だ。)

政府の動きでエアアジアの登場によってすぐに売却ができたとは思わないが、少なくともリーマンショック後、エアアジアへの嫌がらせを終了した2010年くらいには本来は売却を検討しているべきだった。そして2014年に例の事故が発生し、上場廃止して立て直しが目指されたが、2015年は原油安による不況を招いた。結果的に何度も何度も「将来的な回復」を見込んで問題の先送りがされてきたということが分かる。

最近のポジティブなニュースと言えば、サービスの向上の努力が認められ、Pacific Area Travel Writers Association(PATWA:太平洋地域トラベルライター協会)によりPATWA Awards Best Airline Asiaを受賞したことだろう。こうした意味においても、今後世界的な景気後退懸念から考えても、良い売却タイミングであると思われる。

2019年9月18日追記

日本航空がマレーシア航空の株式取得の可能性が報道されたことにより、当記事へのアクセスが急増している。

参考:ブルームバーグ「日本航空、マレーシア航空の株式取得の可能性も-エッジ紙」2019年9月15日

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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