カジノの管理と利便性のトレードオフ

政治体制が共産主義国であるベトナムも、近年はカジノの解禁に前向きで、以前は外国人観光客向けのカジノしかなかったが、現在は試験的にフーコック島などで自国民も入場可能なものの運営を開始している。

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その背景にはベトナム人のギャンブル好きの国民性にある。ベトナム人は年間30億ドルも宝くじに、海外のオンラインカジノにも10億ドルを費やしている。2019年には10億ドル規模のオンライン違法賭博サイトが摘発されるなど犯罪行為も横行している上、闇賭博はマネーロンダリングの温床であり、ベトナム政府としても「必要悪」として認識を強めているからだ。

とは言え、基本的にはカジノは依存症などの問題もあるため、自国民よりも外国人観光客に利用してほしいというのが各国の本音であり、一般に自国民の入場規制は厳しい。高い入場料を取るケースが一般的だが、より厳しいものとして収入証明が必要なケースもある。

ベトナムのカジノは収入証明が必要なパターンであり、月額1,000万VND(440 USD)の収入が必要となっている。

しかし、考えてみれば分かるが、娯楽施設に遊びに行くのに収入を証明する書類が必要となると非常に面倒だ。ベトナムの場合、そもそも収入証明が必要という事実自体もあまり認知されておらず、持参を忘れるケースも多い。故に潜在的なギャンブル市場規模の割に国内カジノの売上は伸び悩んでいるというのが実態である。

ベトナム外国投資企業協会(VAFIE)はこの度、経済回復手段としてのカジノ振興を政府に提言し、副首相の助言を元に、カジノサービス開発についての全国評議会を設立した。

これは適切な投資プロジェクトに許認可を与えることでカジノ開発を進めると共に、法律や制度などへの適合性などを評価するためのプロセスが含まれる。カジノは管理と利便性のトレードオフがあり、まだまだ小さいベトナムのカジノ市場の今後を見る上で、政策の在り方は非常に重要と言える。

参考文献:Vietnam+, “Measures proposed to promote casino operations”, 18 May 2020

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