「米国のデラウェア州は簡素な企業設立申請と安い法人税が魅力でスタートアップや米国進出に最適」と言われていた時代があるが、それも昔の話である。
POSシステムやクレジットカード決済システムなどの決済ソリューションの比較や調査を手掛けるComparisunが、米国でスタートアップを起ち上げるのに最適な州(The Best State To Launch A Startup)というレポートを公開した。
これは、米国の国勢調査や労働統計など各種統計などを用いて、米国各州の新規事業設立数や法人税率、人件費、生活費などからスタートアップに向く州をスコア化しランキング化したものである。
本稿では米国50州のうち、上位5州と下位5州を和訳して掲載する。
順位は「合計スコア(100点満点)」順に掲載されている。合計スコアの算定根拠が、表に示す各項目である。
- 新企業設立数:2019年第3四半期の新規企業設立数
- 新企業設立数年変化率:2018年第3四半期から2019年第3四半期の変化率
- 企業生存率:2013年3月に開業した企業の5年生存率
- 起業1年目の起業家割合:新規事業主である人の割合(法人の所持・非所持などを問わない)
- 法人税率:最低法人税率(但しフランチャイズ税や事業税などは考慮していない)
- 大卒者割合:学士号以上を保有する25歳以上に人口割合
- 人件費:1人当たりの平均収入
- 生活費指数:100を米国の平均としたときの生活費(低いほど生活費が安い)
1位はテキサス州であり、0%という法人税率や安い人件費と生活費などが魅力的であり、新規企業設立数も四半期で30万件近くと非常に多い。起業1年目(ニュー・アントレプレナー)の割合も高く、5年間での企業生存率が50%を超えていることも高評価の理由となっている。
上にも注記しているように、法人税率以外にフランチャイズ税など地方特有の税金がかかるケースが除外されているが、それでも全体的にランニングコストが低いということはスタートアップにとっては非常に良好な環境であると言える。
2位以下はフロリダ、オハイオ、コロラド、アリゾナと続く。アリゾナ州こそカリフォルニア州の隣であるが、他は大都市部とアクセスが良いとも言えず、ITスタートアップが多い現代において、どこでも良いという現状がよく分かるし、また、地方の州が企業を多く集めるために法人税率を下げるなどの施策を行っている傾向もよく分かる。
対して有名なデラウェア州は下から2番目49位であり、今や全米で見ても高いと言える法人税率(9%)や、高い人件費や生活費などスタートアップにとって良い環境ではない。Fortune 500に入るような大企業が本社として登記しているケースは非常に多いが、スタートアップが集まる場所ではなくなってきている。
参考文献:Comparisun, “The Best State To Launch A Startup”