バンクオブアメリカ・メリルリンチは、調査した投資家の80%近くが投資の判断基準として予想PER(Forward P/E)を利用しているが、2010年以降は低PER株のパフォーマンスが低下しているという調査結果を明らかにした。
予想PERは、アナリスト予想の一株当たり利益(予想EPS)を基準にしたPERである。
下図は、1989年6月を100とした時の、S&P 500に対する低PER株のパフォーマンスである。リーマンショック以前までは相対的に低PER株のパフォーマンスは高かったが、金融危機以降の2010年の相対的なパフォーマンスが下がっている。逆に2010年以降は典型的な成長株であるFAANG株などの高PER株のパフォーマンスが高い。
同社のストラテジストであるサヴィータ・スブラマニアン氏は、「誰もがPERを基準に投資していることでその優位性が失われている」という見方を示している。
PERに絶対的な基準があるわけではない。今のように情報が得やすい時代になると、「安く放置されている株」というのも以前に比べれば少なくもなっている。だから低PERだからと言って投資しても利益が得られないというのは当然かもしれない。
一方で、高PER株のパフォーマンスが高いというのは、それだけ「予想PERが将来の利益期待の現れ」として役目を果たしているとも言える。成長期待への高さがPERの高さとなって現れ、それが更に投資の流入を招くという循環である。
しかしながら、筆者としては予想PERの扱い方は投資期間の長さで異なると考えている。金融危機以降は高PER株に対して「投資が投資を招く」という好循環で高いパフォーマンスを示しているが、一方で将来の反動も大きいと思われる。
これは金融危機以前の低PER株の相対的なパフォーマンスを見ても分かる通り、金融危機以前は190と大幅にS&P 500のパフォーマンスを上回っていたが、金融危機によって120辺りまで低下している。つまり長期的に見れば過去においてもリスクを考慮すれば「低PER株の相対的なパフォーマンスが非常に高い」とも言い切れない。
そうすれば、金融危機が来た時の高PER株に来る反動も大きいと想定される。この時、2010年以前・以後で見れば予想PERによるパフォーマンスは異なるが、金融危機で区切らなければそれほど長期的なパフォーマンスは変わらないようにも思える。