環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP, いわゆるTPP)やヨーロッパ–ベトナム自由貿易協定(EVFTA)など経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)に力を入れるベトナムだが、重要産業の一つである繊維・衣料がその恩恵を受けられていないようだ。
生地不足で苦戦する繊維・衣料生産(Vietnam+)
- ベトナムの繊維・衣料の輸出額は400億ドル(生地にして100億m分)だが、国内の繊維産業は生地需要の25%しか満たせておらず、大半は中国・台湾・韓国から輸入されている。(輸入額130億ドル)
- 国内生産される生地は中低品質衣料品向けが多く、輸出品として適していない
- EVFTAの原産地規則は「生地以降」を国内生産する必要があり、輸出に適した生地の生産が不足している
- 業界の輸出の60%はFDI企業のもので、国内企業は繊維染色産業の高度化に消極的である。
- ベトナム繊維・アパレル協会は、80億mの高付加価値の生地を生産できるようにするには300億ドルの投資が必要と考えている。
解説
FTAには「原産地決定基準」が定められ、品目ごとに「どこの生産国とするか」と認定するための基準がある。EVFTAの衣料品については「生地から生産して初めて生産国」として認められることになっている。
この場合、中国などから輸入した生地を使ってベトナムで衣料品を生産しても、ベトナムの衣料品という扱いにならず、輸出する時にFTAの低関税の恩恵を受けられないという意味である。
ベトナムの繊維・衣料産業は大きいが、多くの場合は国内向けの低品質製品が多く、輸出に関しては外資企業が生地生産から手掛けて6割の輸出シェアを取っているという状況である。
FTAの恩恵を受けて衣料品を輸出するには、繊維生産の高度化(染色技術の高度化、環境への配慮、デザイン性の向上など)が必要だが、そのための資金が不足しているというのが現状である。
参考文献
Vietnam+, “Textile and garment production struggles due to lack of fabric”, 5 Nov 2020