メルボルン大学のメリッサ・ロジャーソン氏によると、ドイツのボードゲーム業界は過去5年間で40%以上成長し、「ボードゲームのルネッサンス」と言える状況にある。世界最大のアナログゲームSPIELの見本市では1,500もの新しいボードゲームが紹介され、世界中から20万人以上が傘下した。
ボードゲームのイメージと言えば、将棋やオセロ、モノポリーといったものを想像すると思うが、最近の流行を取り入れた新しいボードゲームが数多く登場しており、そうしたものがブームを牽引している。
「脱出ゲーム」型ボードゲーム
日本でもすっかり定着したと言える脱出ゲームだが、海外でもEscape room(脱出室)として有名だ。この脱出ゲーム体験をボードゲームとして提供することを目的としたExit: The Gameシリーズが2017年にドイツで大ヒットしたことが重要なムーブメントだと位置づけられている。
特徴的なのは「使い切り」ということである。以下がそのゲームの一つThe Pharoh’s Tomb(ファラオの玄室)であるが、円盤やカードなどが基本となっており、最大6人で協力して、カードを切断したり折り込んだり、書き込んだりしながら謎を問いていくものである。
シリーズには多くの製品が存在するが、その多くは日本語化もされている。
しかし、使い切りはビジネスとしては巧いが、ユーザーとしては譲渡したり、知人に紹介して試してもらったりといった風に使えないという意見も多い。
そういう意味で、同じ謎解きボードゲームというポジションで再利用が可能なものとしては、Unlock!(アンロック!)シリーズが紹介されている。これは、ボードゲームだけでなく、時にスマートフォンアプリを用いて問題解決を行っていくという要素があり、非常に現代的なボードゲームと言える。これも日本語化されている。
テクノロジーとの融合
アンロック!シリーズに限らず、デジタルツールと融合したボードゲームは最近のトレンドである。例えば、Chronicles of Crimeシリーズは犯罪捜査をテーマにしたボードゲームで、アプリは勿論、VRメガネもついたもので、シナリオを選択して協力しながら解いていくという、もはやボードゲームと言えるのかも怪しいものである。
他にはBeasts of Balanceといったバランスゲームも紹介されている。これは動物型のフィギュアを積んでいくと、連動したスマートフォンアプリで動物が動き成長していくというものだ。こちらは2020年1月8日現在、販売元が買収されて正規販売されておらず、並行輸入市場も高騰している。
ボードゲームが愛される4つの理由
ロジャーソン氏は、ボードゲームが愛される理由として以下の4つを挙げている。
- ソーシャルな遊びであり、楽しく思い出に残りやすい
- 知的・戦略的志向などを利用する面白さ
- 「物質」であることの価値
- 細かく状況に合ったゲームが欲しいというニーズ
まず、多くのボードゲームは複数人で協力・対戦するものであり、頭を使うものも多い。この体験は社会的な欲求や知的欲求を満たすものとして奥深く、古くからボードゲームが愛される要因である。
また、物として残り、ゲームによってはデザイン性が優れていたり、希少だったりするので収集家も多く、場合によってはプレミアがつくということも重要だ。
そして、最後の理由は毎年膨大な種類のボードゲームが発売されていることを説明する理由である。脱出ゲームといった新しいゲームの再現を目指したり、デジタルツールと融合したり、様々なトレンドを吸収しながら多様なゲームが出ている。これはゲームというものに対しても細かなニーズが存在し、それを充足しようとするものであるという見方がされている。