金融リテラシー教育に力を入れる中国

要約

  • 中国が小中学校での包括的な金融リテラシー教育の導入を決定
  • 不動産バブルで顕になった国民のリスク意識の問題などが背景
  • 将来的な経済の混乱に備えた洗脳の意味合いもある可能性

なぜ中国は学校での金融リテラシー教育を強く推進しているのか(Channel NewsAsia)

  • 中国証券監督管理委員会(CSRC)は全国の小中学校に金融リテラシー教育の導入計画を発表
  • 上海や広州などでの試験的プロジェクトの成功を経て、教育省とCSRCの検討の末、包括的なカリキュラムの導入を決定
  • 不動産バブルを経て、リスク管理や財務上の決定に関する規律や理解が必要というのがリテラシー教育導入の背景
  • 投資に関する楽しいアプリやゲームなども使い、資金調達の現実、ポートフォリオ管理の落とし穴、貯蓄の重要性を子供のうちから浸透させるのが狙い
  • カリキュラムの成功の為に、教育省、CSRC、OECDが協力して教師への金融リテラシー教育も推進する計画
  • 中国の政策立案者は現在の改革が将来的な国内市場の混乱に向かうと予想しており、それに備える目的もある

解説

記事によると、小学1年生の時からPERやCAPMなどの基本に触れる。教科書に金融リテラシー教育のカリキュラムを導入し、退職者や知識の少ない投資家が詐欺に遭う事を防ぐのに役立ったツールなども使われ、金利やインフレ、貯蓄の重要性といった基本的な金融リテラシーから、資産形成の方法やリスク、資金調達についてまで広く本格的な内容になるという。

2015年の中国市場の大暴落まで、中国では家計資産を借金を重ねて不動産に投資するというのが横行していた。中国政府としては、住宅所有を一般化させて不動産市場を高騰させて経済も後押しさせる狙いがあったが、バブルの手前で抑えるというのは現実的には難しいわけで、その反省を踏まえたのが今回の「小学生からの金融リテラシー教育」である。

しかし、日本人に多く見られる「投資は怖い」という教育ではなく、「リスクテイクの精神を身につける」のも目的に入っている。その意味では金融リテラシーが日本よりも高く、リスクテイカーも多い米国に近い投資家像が念頭に入っているのではないかと思える。

中国らしいのは「中国政府も自身の政策の将来的なリスクを理解」しており、「国内経済に混乱が生じても適切に家計が動ける」ようにするためにコントロール(子供の頃から洗脳)しようという点だ。

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そういう意味で、実際にどういう教科書になるかは非常に興味があるが、子供の頃から貯蓄や投資など全般について金融リテラシー教育を行う事自体は良いと思う。

参考文献

Channel NewsAsia, “Commentary: Why China is making a strong push for financial literacy in schools”, 6 Apr 2019

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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