現在のイスラム銀行は小さすぎる可能性

ビジネスにおいては規模の経済が働き、銀行は信用も重要なので、ある程度大きいことが重要である。一方で、過剰に大きすぎると管理コストの増大による効率性の低下、破綻時のシステミックリスクなど付随する問題も多い。

こうした政治的経済的理由から金融機関の「最適なサイズ」は多くの先進国で研究されている。一方で発展途上国ではこうした研究は少なく、ましてやイスラム金融機関については尚更である。

The Malaysian Reserveによると、こうした理由からイスラム金融についての教育と研究を行うINCEIF(International Centre for Education in Islamic Finance) は、マレーシアなど12の発展途上国に存在する249のイスラム銀行(うち63が専業のイスラム銀行、186が従来型銀行との二重システム)について、資産規模と収益性のトレードオフを検証した。

結果については、資産規模が20億ドル未満だと効率性が悪く、20億ドルを超えると効率性が向上するが、50億ドル程度がピークとなり、70億ドルを超えると急激に効率性が減少するそうである。

これは、先進国における同様の銀行についての研究でしめされる規模と比べれば遥かに小さい。このことについてINCEIFのObiyathulla Ismath Bacha教授は、

  • 先進国と発展途上国の金融システムインフラの違いによる効率性の違い
  • イスラム金融セクターの方が従来の金融セクターよりも小規模な企業が乱立している

という2つの背景があることを指摘している。

イスラム金融はスキームの開発など先行投資が従来型の金融機関よりもかかるが、それで十分な効率性を出すには「規模が足りていない」と指摘している。

それをふまえ著者らは、金融規制当局は”Too Big To Fail”よりも”Too Small To Success”を心配すべきと結論づけている。

参考文献:The Malaysian Reserve, “Islamic banks — too big to fail or too small to succeed?”, 15 Jul 2019

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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