OECD国際教員指導環境調査(TALIS)から見る日本の教員の「教え方」

先日発表された国立教育政策研究所によるOECD国際教員指導環境調査(TALIS)による、教員の比較調査から見えた日本の「勤務時間の長さ」や「低い満足感」、「ICT活用の遅れ」といった実態が多く報道された。

参考1:産経新聞「中学教員の仕事時間、日本は48カ国中最長の週56時間 OECD教員調査」2019年6月19日
参考2:教育新聞「低い教員の自信と満足感 対策は必要?」2019年6月20日
参考3:日本経済新聞「ICT活用に遅れ 日本の小中教員、OECD調査で判明 」2019年6月19日

一方で、教員の「教え方」に関するデータはあまり多く報道には乗らなかった印象である。上記の日本経済新聞の記事では 「明らかな解法が存在しない課題を提示する」指導や「批判的に考える必要がある課題を与える」 指導を頻繁に行う教員が国際的に見て非常に少ないことには触れられているが、これ自体には驚きは無い。

(中学校教員の場合、前者はTALIS参加国48ヶ国平均37.5%に対し16.1%、後者は平均61.0%に対し12.6%である。)

筆者が注目したのは「前回の授業内容のまとめを示す」と「新しい学習内容と過去の学習内容がどのように関連しているか説明する」 指導を「しばしば」または「いつも」行う教員の割合である。

中学校教員の場合、前者はTALIS参加国平均75.7%に対して58.6%、後者は平均86.2%に対して63.1%である。小学校教員でも同程度の差が存在する。(82.7%に対して60.8%、87.7%に対して68.6%)

批判的思考などの設問に比べれば差が小さいので報道に乗らない理由は分かるが、こちらの方が新しい発見のように思える。

通常、教育カリキュラムは「以前に学習した内容を前提として次に進んでいく」ことが多い。無論、単元の変わり目によっては前回までの内容と殆ど関連性が無い場合もあるが、基本的には「積み重ね」で進んでいく。

これは、学習していない内容を事前知識とすると「新しい内容を理解する為に別の知識が必要」になってしまい、内容を理解するのが大変だからである。(数学を駆使する学問の教科書が難解であることが多いのは、多くの事前知識が「既知」として書かれているからである。親切な場合でもせいぜい付録として補論があるくらいである。)

だからこそ教育カリキュラムを作るのは難しいのだが、幸い義務教育レベルの教科書は、事前知識が無くとも読めるようになっている。それなのに教育の運用として「過去の内容の関連性」を説明しないのは「知識の有機的な結びつき」を損なうだろう。

個々の内容が「点」としては理解できていても、それぞれが「線」として結びついていないがため、いざ利用しようとしても使えず、応用例にも対応できなくなる。

文脈として理解できていれば記憶として定着させることもそれほど難しくないが、「点」レベルの理解だと個々の内容を英単語のように丸暗記してしまうことになる。

筆者は現在IT教育に関わっており、指導の方針として「各要素の関連性についての説明」を重視している。多くの受講生は「各要素を関連付けて学習する習慣」が無く、どうしても個々の「点」レベルで理解しようとする傾向がある。

これは筆者の仮説だが、子供の頃からの「点で学習する習慣」が標準になっているのではないかと思っている。

参考文献:国立教育政策研究所「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)」

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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