多くの電子タバコ利用者は喫煙を減らす為目的で利用しているが、最新の研究では寧ろ電子タバコの方が気道にニコチンが届きやすくなる可能性があるという。
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicineに掲載された論文では、ニコチン含有の電子タバコの蒸気と通常のタバコの煙では、どちらが気道の異物を除去する能力に悪影響があるかの実験結果が報告された。
参考:Chung, Samuel, et al. “Electronic Cigarette Vapor with Nicotine Causes Airway Mucociliary Dysfunction Preferentially via TRPA1 Receptors.” American journal of respiratory and critical care medicine ja (2019).
https://doi.org/10.1164/rccm.201811-2087OC
この報告によると、電子タバコの蒸気が粘液繊毛機能障害を引き起こしやすく、異物であるニコチンの除去が難しくなり、結果的に一回の吸引では通常のタバコよりもニコチンの吸収量が多くなってしまうというのである。気道の粘液が働きにくくなるので、通常なら痰などで排出されるようなものも吸収されてしまっている可能性がある。
粘液繊毛機能障害は、喘息など多くの肺疾患で特徴的に見られる症状であり、他の疾病を併発する可能性も指摘されている。
また、電子タバコ利用者が慢性的な気管支炎を発症するケースも多く報告されており、本研究との関連性も指摘されている。
タバコと電子タバコでは含まれている有害物質が異なるので、ニコチンの多さだけで電子タバコが危険とは言い難いが、禁煙目的としては依存性の高いニコチンを含有したタイプの電子タバコを利用することは逆効果かもしれない。