投資先への基準として不祥事が起こりにくい企業体質であるというのは大切なポイントである。
今回はそれを見極めるポイントを整理したい。
まず、逆に不祥事が起こりやすい状態の企業とはどのような特徴を持っているか考えてみたい。
近年有名な企業の不正事案をいくつか挙げてみると、多くに共通するワードは「売上至上主義」だ。
例えば、ネットワンシステムズは循環取引で問題になったが、社内で力のある営業マンが売上目標を達成すべく行なっていたことが原因であった。
東芝は、カンパニー制による事業部同士の売上目標への競争激化とそのプレッシャーから工事進行基準の悪用を始めとする不正会計を行なった。
スルガ銀行はかぼちゃの馬車のサブリース案件での資料改竄を始め、様々な不正が発覚したが背景は銀行内での融資目標至上主義が原因であった。
多くの企業で言えると思うが、基本的に収益を上げる部門は一番力が強いし発言力も大きい。(一方で管理部門はコストセンターと言われることも多いと聞く。)
確かに営業成績は個人の能力を測るバロメーターとしては明快で、管理部門の人員の能力を測る明確な手段がない以上、営業担当者の方が評価されるのは明らかである。
個人的な見解ではあるが、新卒一括採用で部門別採用をしていないような日本企業では、営業ができる社員(=営業部署)と営業に向いていない社員(=その他の部署に配属)のような分け方で序列を決めてしまっている傾向にあるため、社内での序列は思った以上に拡がっている可能性すらある。
こういった状況では、より収益部門の発言力は非常に強烈になっていき、上層部もそういったメンバーが大半を占めるため、その他からの抑止力が効かず、結果不正の温床になる(決して収益部門が不正を起こしやすいと言っているのではなく、偏りが生じた場合に問題が起きやすいという点を指摘していることをご留意いただきたい)。
これらの傾向を踏まえると、逆に言えば「役員構成とその経歴」に着目するとその企業の社内での力関係を把握することができる。
例えば、有価証券報告書には役員の経歴が記載されており、今のメンバーがどのような経歴を通ってきたかどうかを読み取ることが可能だ。
社外取締役の割合等を重要視する議論も盛んであるが、実際のところプロパー組が実質事業運営しているのが現実である。
こういった観点からプロパー役員の構成と経歴は非常に重要な非財務情報であり、企業体制を読み解く上で重要な指針になるであろう。