【書評】『2050年の技術』:プライバシーが贅沢品になる

2017年にロンドンエコノミストが出版した”MEGATECH: Technology in 2050″(邦題『2050年の技術:英『エコノミスト』誌は予測する』)という本がある。

人工知能や再生可能エネルギー、3Dプリンターといった既に活気があり伸びることは間違いのない分野から、宇宙エレベーター、脳とインターネットの接続、曲がる弾丸などSFチックな内容まで18の章に渡って幅広く取り上げられている。

その中で今回取り上げるのは第14章「プライバシーは富裕層だけの贅沢品に」である。ここに書いてある内容は、ビッグデータと人工知能の発達によって、医療や教育、法務といった複雑な業務分野にもどんどんアルゴリズムが導入されていき、多くの分野で人間を超えていく。

一方でこうした分野が発展していくと、あらゆる観点から個人の特徴を洗い出すことができるようになるので、プライバシーなど「個人の情報の価値が高まっていく」という予測を示す。

これに関しては既にEUのGDPRや最近日本でも言われている「情報銀行」など既にそういった世の中になりつつある。実際本書でも、企業や個人の情報資産を預かる「データ銀行」が誕生するという予測を示している。

個人情報が単なる保護対象としてだけでなく、財産的な価値を帯びるようになれば、今まで無料でサービスを提供していたGoogleなどが「進んでデータを吐き出さなければ有料化する」という予測を示している。

こうしたことが進んでいけば、プライバシーは別荘やビジネスクラスといった贅沢品になっていくのではないか、という論調である。

EUがGoogleに対して強硬な態度を示し、GoogleはEUでのGoogleアプリの有料化の動きなど、既にその傾向が出始めている。

逆に言うと、本書は「2050年」の予測としては物足りない。2050年の予測というならもっとぶっ飛んでいてほしいからだ。しかし、現時点での技術や経済などから十分に予想しうる「近未来」を眺めるための本としては素晴らしいと考えている。

英エコノミスト編集部(2017)「2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する」文藝春秋

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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