一般に、赤道直下の暑い国よりも、ヨーロッパなど相対的に北部にある国の方が裕福であるケースが多い。そして、各種の先行研究によると地球温暖化の影響によって、豊かな国は経済的に良い影響を受けているのに対し、貧しい国は悪い影響を受けているという。
気候変動が裕福な国を更に裕福に、貧しい国を更に貧しく(Fast Company)
- 米国科学アカデミー紀要によると、1961年と2010年の不平等度の変化を見ると、1人当たり財産は、貧しい国では気候変動によって17~30%押し下げた。
- また、最富裕国と最貧国との差は、気候変動が無かった場合と比較して約25%大きくなっている。(時間とともに国家間の不平等は是正されているが、地球温暖化がその速度を遅らせている)
- 経済成長と気温の間に関連性が見られる。スウェーデンのような寒い国ではある程度の気温の上昇は利益をもたらしてきた。
- 一方で気温の最適点を越すと熱波が作物を傷つけるなど生産性を損なう。
- 発展途上国がエネルギーへのアクセスを拡大することは経済成長にとって重要だが、その成長の利益の一部を打ち消すのを避けるために、再生可能エネルギーの利用も重要である。
補足
記事では、産業革命以降で地球は1度温暖化しており、パリ協定の目標が達成できれば2度までの温暖化で抑えられる。一方で、それは無理という見方が強く、国連世界気象機関によると、全ての国が地球温暖化に対処しても3度まで上昇する可能性が高いという。
記事の論点は、「エネルギーを拡大することは経済成長にとって不可欠だが、ある程度再生可能エネルギーにも焦点を置かなければ、その効果を打ち消してしまう」ということだ。それがどのラインであるかは明示されていないが、「最も汚染されている国のいくつかは、5度の温暖化のペース」であると言う。
現在の地球温暖化の原因の大半は先進国であり、追随する発展途上国に大して「気候変動の対策せよ」というのは、現実的に全ての国による合意は無理だと筆者は考えていた。
もしその合意が可能であるなら、この記事の通り気候変動自体が経済成長に有意に影響があるというのであれば、経済成長率を最大化させるエネルギー利用量というのを考え、それに対して合意を得るというものだ。当然この時、単純な温室効果ガス排出量だけでなく、地球温暖化でメリットを受けるような国が余分なコストを支払うという意味になる。
とは言え、可能か分からない交渉事に賭けるよりも、地球温暖化(これ自体が進むのはほぼ確定的である)の進行を前提とした投資計画を立てるべきである。その方法についてはまた別記事で書くことにしよう。