ロンドンが本部の広告会社we are socialとソーシャルメディア管理プラットフォームを提供するHootsuiteがGlobal Digital Report 2019を発表した。これは、各国のマクロデータやインターネットやソーシャルメディアの利用統計やレポートを元に、世界中のデジタル環境の動向を見るために毎年発表されているものだ。基本的にはデータの引用が多いのだが、デジタルエコノミーと呼ばれる現代社会の動向を俯瞰する上では有効だろう。
200ページ以上のスライドが続くので、筆者がいくつかピックアップして紹介していこう。なお、引用するデータや画像は特に断りが無い限りGlobal Digital Report 2019のものである。
世界のデジタル環境の概況
世界人口76億人のうち、モバイル環境の普及率は67%(51億人)、インターネット普及率は57%(43億人)、ソーシャルメディア普及率は40%以上とsplinternet(スプリンターネット)の世界で紹介した「約半数」よりかは多いが、4割程度の人はインターネットに接続できていない状態にあることがわかる。
しかし普及のスピードは速く、人口成長率1.1%に対し、インターネットユーザー増加率は9.1%、ソーシャルメディアユーザーも9~10%と1年間で億単位でデジタル環境が普及した。
地域別に見ると、ソーシャルメディアに関してはアフリカとアジア・太平洋地域の成長が著しい。インターネットユーザー自体はどこも増加率が高いが、特にアジア・太平洋と中東の増加率が高い。モバイル決済が急成長するアフリカではやはりモバイルユーザーの増加率が高い。
モバイルインターネットの利用動向
モバイルインターネットの1日当たりの利用時間はタイの5時間13分をはじめ、フィリピン(4時間58分)やインドネシア(4時間35分)など東南アジアを中心に非常に利用時間が長い。ブラジル(4時間45分)やコロンビアなど中南米も上位に並んでいる。若者を中心にスマホ中毒など報道されることは多い日本だが、モバイルユーザー全体で見れば1時間25分と主要国の中では短いことが分かる。(世界平均は3時間14分)
他にもインターネット人口の成長率や上記と同様のデータについてデスクトップ利用の場合などのデータ、インターネット速度、よく使われるウェブサイトや検索キーワードなどが続く。
音声検索・音声操作の利用率は、インド(51%)、中国(49%)、インドネシア(48%)と約半数の利用率となっている。世界平均でも39%とかなり普及してきている印象だが、日本は15%と低めである。
少し変わったデータも
アドブロックの利用率は40~50%台である国が多い。飛び抜けているインドネシア(63%)はインターネット速度の遅さ(固定回線で15.5mbps、モバイル回線で10.5%)も影響しているかもしれない。日本(19%)と韓国(25%)は国際的に見てかなり低い。
その後に国別の優勢なソーシャルメディアの分布図や利用時間、Facebook、Twitter、Instagram、Snapchat、LinkedIn、YouTubeなどについて、より細かい地域での成長率や広告のターゲット人数などのデータが続く。
Twitterでよく使われる絵文字の統計といった少し変わったデータも紹介されている。テキストベースでツイートの感情分析はよく行われているが、絵文字の観点で見ても面白いかもしれない。(既に誰かがやっていそうではあるが。)
Eコマースの利用動向
インターネットユーザーのうち、1ヶ月の間に何らかの端末でオンラインショッピングをした割合は平均で75%とかなり高い。インターネットユーザーにおいては世界的にオンラインショッピングは当たり前のものになってきているということがよく分かる。
但し、「モバイル端末で買い物(Mコマース)をした割合」となると、インドネシア(76%)、中国(74%)、タイ(71%)などを除けば、かなり落ちる傾向にある。日本はeコマース利用率が68%に対し、mコマース利用率は34%と倍の差があり、私もそうだがオンラインショッピングではデスクトップ環境を使う人の割合が高い事が分かる。
その後には、eコマースでの消費財購入額(これは先進国が当然高い)や以下の一人当たりGDPに対するeコマースでの消費財購入額の割合が続く。こちらは中国が7.2%とかなり高いことが分かる。日本は2.4%と調査対象国の中では平均くらいだろうか。
その他のデータ
他にはクレジットカードの保有率やモバイルバンキングの普及率、モバイルウォレットの保有率、仮想通貨の保有率なども載っている。以下にスライドを貼っているので、興味があれば是非読み、必要に応じて元のデータを参照するのが良いだろう。