要約
- アフリカでは銀行口座を持てない貧困層を中心に携帯電話を使ったモバイル決済が普及
- モバイル決済利用者が豊かになってくるのをターゲットに、そこから保険や投資商品の購入などにも繋げるフィンテック事業が成長している
- 一方でアジアでは仮想通貨を利用したマイクロペイメントの取組みも多い
サブサハラアフリカのフィンテック:潜在的なゲームチェンジャー(IMF Blog)
- モバイル決済システムM-Pesaは10ヶ国で3000万人のユーザーがいる
- サブサハラアフリカではモバイルマネー口座が従来の銀行口座の数を上回り、GDPの10%近くの取引がモバイル決済
- フィンテックによりサービスが広がり、モバイルマネーで貯蓄口座の開設・融資・保険購入・投資なども可能になってきている
- 外国投資家もアフリカのフィンテック企業への投資を加速させている
- フィンテックが雇用創出、生産性の向上に寄与しており、アフリカのデジタル経済の成長の足がかりとなる可能性
解説
アフリカで携帯電話を使った決済が広く普及しているのを知っている人は多いだろう。その背景には主に
- 銀行支店やATMが少ない(人口10万人当たりの支店数が5、ATM数が6)
- 口座維持手数料が払えない
- 携帯電話の値下がりにより携帯電話普及率73%にまで上昇
といったものがある。日本ではタンス預金の懸念が強いので普通預金口座で口座維持手数料を取る銀行は見られない(代わりにATM手数料などで実質的に徴収する)が、海外の多くの銀行では口座維持手数料が高かったり、免除されるには預金残高要件があったりと、貧しい国では利用が難しい。その理由もあって支店も殆ど無い。
そこで目をつけてできたのがモバイル決済で、携帯電話1つあれば貯蓄と送金が可能なので貧しくても導入が容易い。最大のM-Pesaは、元々はケニアの部族間の送金の為に普及したのが始まりである。一般的にはマイクロペイメントという。
最近はフィンテックが流行りであり、単に送金するだけでなく、他の金融サービスも導入されたり、従来の金融サービスと接続したりということが可能になってきている。元々モバイル決済しか使えなかった人も、経済的に豊かになってくるにつれて保険や投資なども必要になってくるので、そこにスムーズにシフトしてもらおうというのは有効な戦略であろう。
一方でアジアではモバイル決済よりも暗号通貨(仮想通貨)を利用したマイクロペイメントの取組みが多いようだ。例えばタイの携帯電話販売業者Jaymart<JMART:TB>はインドネシアなどで銀行口座を持てない人のマイクロペイメントの普及のためのJFinCoinといった取組みを行っている。今のところ目立った成果は出ていないが、最悪QRコードが載った紙1枚で資産の保全が可能なので、一つの取組みとしては面白い。
参考文献
IMF Blog, “Fintech in Sub-Saharan Africa: A Potential Game Changer”