要約
- 通信機器の「悪意」を見つける事は年々困難になってきている
- ロシアにとっては5G機器開発国のすべてが敵である
- 自力調達のためにプーチン大統領は5Gの開発を急ぐように指示
ロシアの5G問題は解決困難(Sputnik)
- モスクワの国立研究大学高等経済学院客員教授ジェフ・シューベルトが5G問題について行われている議論について語った
- 先進国はスパイウェアやインフラ破壊の懸念から中国のHuawei社の機器の使用を禁止する動き
- スパイ技術の進歩により機器内の「悪意」を見つける事が困難になってきているのが背景
- 日本、欧州、韓国から機器を入手しようとしても、アメリカの圧力でそれらの機器にスパイウェアが仕込まれるリスクがある
プーチン大統領は今後数年間でロシアで5Gネットワークを開始するように指示(TASS)
- プーチン大統領は数年以内に高速インターネットアクセス網の運用を開始するように指示
- デジタル経済インフラの開発のためのマスタープランの採択の必要性を主張
- 2024年までに30万人以上の人口の都市で5Gネットワークが開始する予定
解説
5Gのリスクといえば中国のHuaweiばかりが報じられる中、ロシアの通信社(SputnikとTASS)のい2つの報道から自国内の焦りがよく見えてくる。勿論、ロシアの通信社という性質上、プロパガンダ的な側面があるのだろうが、個別の記事を並べると全世界が敵であることに焦りを感じているように見える。
ロシアとてHuaweiの5G機器をそのまま導入することは難しい。アメリカは他の先進国と連携してHuaweiの機器について調査できる一方で、ロシアは単独で調査しなければならないからだ。しかも、ジェフ・シューベルト氏によるとロシアは<中国の「スパイ技術」はアメリカを超えている>という立場を取っているようで、それが「先進国がHuaweiを忌避する理由」だと述べた上で、ロシアとしても解析は簡単ではないと匂わせている。
では、他の国(日本、欧州、韓国)の5G機器なら安全かというと、ロシアの立場では全て敵国であり、米国の圧力の元、どこの国の企業に依頼したところでスパイウェアが混入されるリスクは変わらないと言う。
この見方が妥当なのか過剰反応なのかはさておき、ロシアがこのような悲観的な立場でいる以上、残された道は「5Gネットワークの自力調達」である。前に触れたようにロシアが独自のインターネット網を構築して情報統制を徹底しようとする動きがある以上、後者の記事の通り5Gの開発を急ぐのは当然のことだろう。
参考文献
Sputnik, “Russia’s 5G Conundrum”
TASS, “Putin instructs to launch 5G networks in Russia in coming years”
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