要約
- 乾季の少ない雨で生じたスモッグが大きな経済的損失をもたらすと予想されている
- 季節の変わり目の雨と夏の暑い大気によってスモッグの問題は解消されるだろう
- ダムの貯水量が少なく、エルニーニョ減少による少雨も予測され、水不足が懸念される
タイのスモッグ:観光には悪いが、王室の人工降雨部門には良い(South China Morning Post)
- 風、排ガス、建設時の粉塵、火力発電所の煙などで12月からヘイズ(煙霧)の問題が続く
- 政府観光局は観光客に対策を取るように進め、王立人工降雨農業航空局は実験を行った
- カシコン銀行傘下のカシコンリサーチセンターの調査では、バンコクとその周辺の経済的損失は8,300万ドルに達すると試算
タイのスモッグは緩和しそうだが、夏には水不足が懸念される(The Straits Times)
- 2月下旬の季節の変わり目に寒冷前線が北部で強い雨を引き起こしてPM2.5の除去に大きく寄与する見込み
- 夏になると南からの暑い風によって綺麗な大気の状態が続く
- 乾季の少ない降雨により主要なダムの貯水量が20%以下で、このまま暑気を迎えると水不足が懸念される
解説
タイの季節は、バンコクだと概ね以下の通りである。
- 11~2月:乾季(タイでは冬とも表現される)
- 3~5月:暑気(夏)
- 6~10月:雨季
この冬(乾季)は特に雨が少なかったため、タイでは排ガスや建設に伴う粉塵などでスモッグが問題となっていた。今のところ海外旅行者の大幅な減少といった事には繋がっていないようだが、カシコンリサーチセンターは悪影響が出ると予想している。
人工降雨プロジェクトはうまくいかなかったようであるが、季節の変わり目の降雨により、汚染した粒子を綺麗に洗い流し、夏(暑気)になると南から熱波がやってくるので、北部の汚れた空気は降りてこないと見られている。
大気汚染を見る指数として大気質指数(AQI: Air Quality Index)というものがあるが、2月14日時点ではまた少し上昇しており、その区分は以下の通りである。
下図はWorld Air Quality Index projectが作成している世界中の大気質指数をリアルタイムで確認できるReal-time Air Quality Index Visual Mapのアジア地域だけキャプチャしたものであるが、赤丸部分のタイの中心部は一部が155(赤)と汚染状態にある。もっと数値が高い傾向にある中国やインドと比べれば、大体どの程度かイメージがつくのではないだろうか。ちなみに日本は概ね緑か黄色と安定している。(秋田県の439はデータの異常値のようだ)
今後はこの状態が改善されていくと見られているが、今度は水不足が心配されている。王立灌漑局(RID)によると、3つの主要なダムの貯水量は20%を切り、残りの60の中規模ダムの貯水量も30%を切る状態になっている。更に、今年はエルニーニョ現象の発生が予測されており、降水量が減少すると予測されており、水不足や干ばつのリスクがあるという。
どちらかと言えば雨が降り過ぎて水害が発生する事の方が多いタイなので水不足と聞けば驚くが、農作物などに大きな影響が出るかもしれないので注意が必要である。
参考文献
The Straits Times, “Smog in Thailand set to ease, but summer brings water shortage fears”