米国の太陽光発電業界を読み解く

要約

  • Solar Foundationの米国太陽光発電業界の労働市場に関するレポートを紹介
  • 2年連続での労働者数減少は関税の影響によるプロジェクトの遅延
  • 州別に労働者数の増減を見ると、人口密度と日射照度との相関が高い

Solar Foundationが太陽光発電業界の労働市場についての分析レポートNational Solar Jobs Census 2018を公表した。これは労働時間の50%以上で太陽光発電関連の仕事に就いている24万人以上を調査した大規模なもので、2010年分から公表を開始し、今回で9回目である。

レポートの大枠の結論としては「2年連続で労働者数が減少しているが、関税の影響によるプロジェクトの遅延であり、2019年は回復するだろう」というものである。

下図の労働者数を見て分かる通り、2010年から安定して急成長してきた労働市場だが、2016年をピークに2年連続で減少している。その間、技術革新と規模の経済により1ワット当たりの太陽電池パネル導入コストも低下していきたが、近年は横ばい傾向になってきている。

米国の太陽光発電関連労働者数の推移(人)と太陽電池パネル導入コスト(ドル/ワット)の推移
出典:Solar Foundation(2019) Figure 1

2年連続の減少の理由としてレポートでは、まず2017年4月に米国の2つのソーラーパネルメーカーがアメリカ国際貿易委員会(USITC)に、輸入された結晶シリコン太陽電池モジュールとセルに関税を課すように請願したことを挙げている。請願結果が出る2018年1月まで市場の不確実性が大きいので、プロジェクトへの入札や契約を見送った業者が多く、多くのプロジェクトが延期されたり縮小されたケースが多かったのである。

実際に2018年1月にトランプ政権は30%の関税(2022年まで段階的に引き下げ)を課した上、5月には中国が太陽光発電推進に対するインセンティブを削減し、モジュールの需要が減ったことも業界への悪影響をもたらしたと指摘されている。(但し、太陽電池パネルの価格は下がっている。)

そして情勢が明確になった2019年はプロジェクトが再開して雇用が伸びる(レポートの予測では6.5%増の約26万人)と予測されている。

州別で見ると、中部を中心に大きく労働者数が伸びているが、西部および東海岸を中心に労働者数が減少しており、プロジェクト延期の影響が大きく出ていることが分かる。

州別太陽光発電関連労働者数の伸び率
出典:Solar Foundation(2019) Figure 2

一見すると都市部の減少が多いようにも見えるが、下図の人口密度ヒートマップを見てみると、人口密度が高い州での減少も多いが、そうでないにも関わらず減少している州もある。

2010年の米国の地域別人口密度ヒートマップ
出典:AMELIABD.COM

以下の日射照度を見てみると、より傾向が明確になる。人口で説明できない部分は日射照度で説明できるだろう。

米国の日射照度(1998-2016)
出典:NREL(国立再生可能エネルギー研究所)

傾向として労働者数が減少している州は以下のパターンに当てはまるケースが多いだろう。

  • 人口密度が高い州
  • 日射照度が強い州

都市部なら所得が高く太陽電池パネルを導入するハードルが低く、人口密度の高さから導入コストも安く、これまで成長が著しかったと考えられる。また、都市部でなくとも日射照度が高い州であれば発電効率が高いので、太陽電池パネルを導入するインセンティブは高くなるだろう。

こうした地域はこれまでは成長が著しかったが、関税の影響により大きな反動がきたと言えるだろう。一方で、都市部でもなく日射照度が強くもない州では、太陽電池パネルの価格低下により需要が増えてきているのではないかと考えられる。

また、下図のようにセクター別で労働者数の推移を見ると、その伸びの大半は設置・プロジェクト開発(Installation & Project Development)であり、雇用自体は最初の設置に大きく影響される。運用と保守(Operations & Maintenance)に関しては1万人強の雇用しか産んでいないので、ある程度太陽電池パネルが行き渡れば、長期的には雇用数としては頭打ちになるかもしれない。

セクター別太陽光発電関連労働者数の推移
出典:Solar Foundation(2019) Figure 4

参考文献

Solar Foundation(2019), “National Solar Jobs Census 2018”

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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