本書は、ビッグデータ活用サービスやデジタルマーケティングサービスを手掛けるブレインパッド<TSE: 3655>による、AIプロジェクトの立ち上げ方や注意するポイントについて整理した本である。
株式会社ブレインパッドら(2018)『失敗しない データ分析・AIのビジネス導入:プロジェクト進行から組織づくりまで』森北出版
オプティムの課題解決とサービス実装のためのAIプロジェクト実践読本がプロジェクトの流れや実務的な部分、事例など網羅的に触れられているのに対し、本書はPoCの段階に重きが置かれている。
- 第1章 AI導入はなぜ失敗するのか
- 第2章 データ分析の基礎を押さえる
- 第3章 データ分析の仕事の流れを理解する
- 第4章 プロジェクト立ち上げ
- 第5章 PoC
- 第6章 ビジネス適用
- 第7章 データ活用をする組織をつくる
1~2章は類書に書かれている事とそれほど大きな違いは無いが、この本で重要なのは3~5章である。プロジェクト立ち上げ段階やPoCで失敗しやすい点について良い指摘が多くある。
特に、5章でPoCのアプローチ決定の例
- 分析結果はどのようにビジネスに活用されるのか
- 何が対象か
- どんな出力値が必要か
- どの程度解釈性が必要か
- 分析結果をどのように評価するか
- 利用できるデータに制約はあるか
- 処理時間に制約はあるか(学習時)
- 処理時間に制約はあるか(適用時)
- 環境面の制約
はPoC段階でのチェックリストとしても使うことができる。3の「どんな出力値が必要か」であれば、売上予測なら、そもそもいつの売上を予測するのか(明日?1ヶ月後?1年後?など)というのが目的によって変わってくるので、そこは最初に明確でなければならない。
4の「どの程度解釈性が必要か」については、最近よく言われる「説明可能なAI」(Explainable AI)にも関係するが、ディープラーニングの方が精度が出ても、寄与している特徴量が人間にはよくわからなかったりするケースは多い。少し精度を落としても、ランダムフォレストの方が現場の人間にも分かりやすいので、そうしたトレードオフについてもよく考慮する必要があるといった話である。
「失敗事例」も多く掲載されており、これからAIプロジェクトを立ち上げようとする担当者や、AIのビジネス導入に興味がある人がまず読むべき一冊であろう。
株式会社ブレインパッドら(2018)『失敗しない データ分析・AIのビジネス導入:プロジェクト進行から組織づくりまで』森北出版