【書評】課題解決とサービス実装のためのAIプロジェクト実践読本

本書は著者である山本大祐氏が株式会社オプティムでのAIプロジェクトの経験を元に、AIをビジネスに導入する際の知識を広く浅く整理したものである。

山本大祐(2019)『課題解決とサービス実装のためのAIプロジェクト実践読本 ~第4次産業革命時代のビジネスと開発の進め方~』マイナビ出版

章立ては

  • 第1章:AIで何かやってみせてよ
  • 第2章:AIの基礎知識
  • 第3章:AIプロジェクトの立ち上げ
  • 第4章:AIコーディングの基礎
  • 第5章:AIサービスの提供と運用
  • 第6章:AIプロジェクト・ケーススタディ

となっている。

第1章の表題となっている「AIで何かやってみせてよ」や「AIで何とかならない?」というのはAIを専門とする人がよく他者から言われる言葉である。著者はこの種の言葉は「AIの理解の欠如」にあるとし、AIの特性について整理した上で、AIの知識が欠如する事業部門(ユーザー)と技術的知識はあるが事業の知識に欠ける開発部門(ベンダー)をつなぐ「ジェネラリスト」の重要性について説かれている。

「AIで何とかならない?」というのは私も「AIで何ができるか」に次いでよく言われる言葉であるが、それが知識の欠如にあるというのはまさしくその通りである。

「ジェネラリスト」が従来から言う「コンサルタント」と何が違うかについては、ジェネラリストの場合は「技術」だけでなく「投資判断」についての意識を持つ必要があると説明されているが、コンサルタントに関しても最終的には経営陣が投資判断をするにしても、その材料を与えるという意味では同様の知識が必要であり、その点では疑問が残る。但し、本書でもディープラーニングG検定について触れられており、ディープラーニング協会の「ジェネラリスト」という用語を意識的に使用しているのかもしれない。

第2章は人工知能研究の歴史や機械学習の類型(教師あり学習など)、学習のイメージ、ニューラルネットワークの概要など技術面での初歩の初歩が整理されており、技術に精通している人であれば読むべき部分は少ない。

第3章が本書で最も読むべき部分で、プロジェクトプランニングからPoC(机上実証→フィールド実証)、製品開発、導入・運用までのプロセスにつちえ、その期間の目安や契約や知的財産権についての知識の整理など、実務者にとって有益な情報が多い。「見積りフォーマットの例」についても大まかなイメージを持つ上で役立つだろう。

第4章は、COCOデータセットとGoogle Colaboratoryを利用し、コードや画面キャプチャを交えながら簡単な画像認識の例を使って開発プロセスの流れを行っている。Google Colaboratoryは実務においてもPoCでモデルを作成する場合にはよく使われる。開発者でない人がイメージを持つには良いまとめであろう。開発者なら単純にGoogle Colaboratoryのチュートリアルなどを実践した方が良いだろう。

第5章は、開発してAIサービスをどのような形式(有償SDK?API?など)で提供するのか、システムはクラウドで動かすのかオンプレミスで動かすのか、ハードウェアは何を使うのか(CPU?GPU?FPGA?など)など、サービスの提供・運用について整理されている。但し、ドローンについての分類や法整備、Googleが提唱するDevOpsなど少し話が散らかっている印象がある。

最後、第6章は株式会社オプティムが関与したAIプロジェクトの事例紹介である。ビジネスとしてAIを活用したい人は「事例を知りたい」という声が多いので、そういう人にとっては幅広い事例が紹介されていて良いだろう。

山本大祐(2019)『課題解決とサービス実装のためのAIプロジェクト実践読本 ~第4次産業革命時代のビジネスと開発の進め方~』マイナビ出版

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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