人工知能で株価を予測したい人へのヒント集(8):株価を予測しない

「株価を予測したい人へのヒント集」と銘打っておいて矛盾するようだが、株価を予測するだけが「課題」だけではない。

初回:人工知能で株価を予測したい人へのヒント集(1):キリの良い数値という固定観念

前回:人工知能で株価を予測したい人へのヒント集(7):やりがちな凡ミス

データ分析でもアカデミックな研究でも、「課題」や「研究テーマ」を見つけるのが実は最も難しく重要な点である。機械学習を利用して株式投資を行って稼ぎたいという意欲が先行し、目的変数を最初から「株価」・「騰落率」・「上がるか下がるか」など直接「利益を生みそうなもの」に絞ってしまうと、分析の可能性を狭めるだけでなく、競合相手が多すぎるという問題もある。

株価や騰落率を予測できるに越したことは無いが、それ以外の値を目標にしても利益を出すためのアイデアはいくらでも存在する。

これは例えば、本シリーズの第3回でも以下のように書いている。

しかし、「◎%以上(上昇)下落するか」といったカテゴリ変数を予測したり、よく使われているテクニカル指標のシグナルが出るタイミングを予測したりといった方法もある。

後者は例えば、RSI(相対力指数)が「20を下回った日」などを決めて「売られすぎ」のシグナルが出るタイミングを目的変数として使ったり、ゴールデンクロスが生じるタイミングを目的変数として使ったりすることが考えられる。

人工知能で株価を予測したい人へのヒント集(3):時系列データ解析という名のテクニカル分析

この他にも、ボラティリティや値幅(高値と安値の差)などを予測するという風にしても利益を出せるだろうし、出来高を予測することができれば、出来高が上昇しそうな時に個別に該当銘柄について調査するといった間接的な利用方法が生まれる。

出来高のように参考数値を作るという観点も必要で、そこまで視野を拡げて考えれば目標変数は非常に多様なものになると考えられる。機械学習とシステムトレードを使って全て自動化するというのは理想ではある。しかし、以前からAI関連業界でよく言われているように「AIと人間の共存」や「AIを必要に応じて使う」という風に、ある部分を機械学習によって自動化する事も検討すべきだろう。

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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