コロナ危機が再びヘリウム供給不足を生む

当サイトでは2019年11月を最後にヘリウム不足についての記事を更新していなかった。それは2020年以降に各国で生産増加が見込まれ、景気後退による需要減少により需給バランスが中長期的に改善していくというコンセンサスが生まれたからである。

しかし、状況が変わったのが新型コロナウイルスによる急速な経済収縮と、原油減産協調決裂による逆オイルショックによる原油価格の低迷である。貯蔵施設の空き容量不足などによりWTI原油先物価格の5月限がマイナスを記録し、ブレント原油も一時20ドルを切るなどした。少し回復しているが、酷い市場環境であることには変わりがない。

原油に隠れて目立たないが天然ガスも大概酷い状況である。そして、主に天然ガスの副作用として採られるのがヘリウムである。

今後、夏に向けて原油市場のリバランスが行われ、原油も更なる減産の方向に進んでいくと考えられるが、需要が落ちているのは天然ガスも一緒であり、天然ガスも減産されるだろう。

そうすると、改善の方向に向かっていたヘリウムの供給増が押さえつけられることになる。2016年にタンザニアで大量に発見されたヘリウムガスなど将来有望なものも存在するが、これは未だ市場化はされておらず、短期的な供給不足解消には繋がらない。また、ヘリウムは新たに探すにも、基本的には原油開発や天然ガス開発の過程で「たまたま見つけられる」ことが多い。多くの新規プロジェクトが見直しや停止されている現状では、ヘリウムの発見も期待できない。

勿論、規制やパーティーの減少によりヘリウム風船などの需要が減少するという要因は存在するが、慢性的に不足しているMRI需要など、大きく需要を押し下げる要因は少ない。大幅な供給不足の状況は更に長く続くと予想される。

About HAL

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

View all posts by HAL →