19日に発表された米国新規失業保険申請は、前回数値21.1万人を大きく上回る28.1万人だった。以下の通り2017年9月に迫る数であり、新型コロナウイルスによる営業停止などによる失業の影響が非常に大きいことが分かる。
一方で、市場予想の平均値はあまり当てにならない。基本的には過去の数値の後追いであり、今回の予想値もそうだが、2017年9月のを見ても分かる通り、突発的な上昇に対応できない。
こうした市場予想を補正する手段としてGoogleトレンドが使える。Googleトレンドについては、先日もツイートしたが、米国では金利の低下による借り換えや、レイオフ、支払猶予など様々な関連ワードについての検索数が急上昇している。
突発的な上昇についてはGoogleトレンドを補助的に使うことができる。以下は米国で2017年以降の新規失業保険申請件数<左軸:千件>と”unemployment benefits”(失業給付)<右軸>の検索トレンドを1区間をずらして示したものである。つまり2020年3月19日公表分の申請件数は、2020年3月8~14日の検索トレンドと対応している。
両軸グラフが重なって見にくいが、最新のデータの突発的上昇を捉えられており、過去にも2017年9月や2019年1月など急上昇するケースに先行して検索件数が増えていることが分かる。
但し、全体としては予測精度はそれほど高くないので、市場予想と組み合わせることが考えられる。例えば、以下は市場予想値に対し「Googleトレンドの過去3週間の平均値と該当週との差」を足した補正値が以下である。市場予想がベースになっているので、突発的に増える週の数字の誤差は依然として大きいが、
- 2017年9月07日:市場予想24.1万人、補正値26.1万人、結果29.8万人
- 2020年3月19日:市場予想22.0万人、補正値25.4万人、結果28.1万人
と前週に対して大幅に増えるケースを捉えることができている。
逆に平穏な週はあまり補正が巧く働いていないようなので、
- 季節変動や前年比などで補正を工夫する
- 差分を取る平均の区間を変える
- 差分が一定の閾値を超えたときだけ補正する
といった方法により、更に精度を改善することができると思われる。
ちなみに、GoogleトレンドでのUnemployment benefitsの検索数は3月15日以降、更に倍増している。3月15~21日が次の発表(3月26日)と対応するはずだが、検索数は3月8~14日の5倍程度になると見込まれる。上記の補正値を用いれば次回はリーマンショック後などに匹敵するような100万人クラスになるかもしれないが、果たしてどうだろうか。
2020年3月26日追記:3月21日までのデータと市場予想が揃ったので上記内容を修正する。 GoogleトレンドでのUnemployment benefitsの検索数は3月15~21日が次の発表(3月26日)と対応し、検索数は3月8~14日の9倍程度になり、上記の差分による補正をかけると150万人となる。これはゴールドマンサックスの予想230万人、市場予想平均100万人を上回る数値だが、果たしてどうだろうか。