SNSでのコミュニケーションを用いた関係性マーケティングやインフルエンサーマーケティングが現代的なデジタルマーケティング手法として主流と見られるが、未だ電子メールによるメールマーケティングは最大のROIをもたらす。
メール配信サービスを手掛けるCampaign Monitor(キャンペーンモニター)は毎年、Email Benchmarks Report(メールベンチマークレポート)を公開している。今回公表された2020年版は、2019年に世界171ヶ国で同サービスを通じて送信された300億通のメールを分析することにより、業種別のEメールマーケティングの効果が数値として示されている。
企業の特性を割り引いて読む必要はあると思われるが、それでもROIという観点で見れば、SNSばかりに注目がいきがちな最近のマーケティングに注意を促す重要な指摘と考えられる。
レポートで取り上げられている指標は、
- 開封率(Open rate):開封数/配信数
- クリック率(CTR: Click-through rate):クリック数/配信数
- 反応率(CTOR: Click-to-open rate):クリック数/開封数
- 配信停止率(Unsubscribe rate):購読解除数/配信数
- 不達率(Bounce rate):不達数/配信数
であり、メールマーケティングにおいてはお馴染みの用語である。開封率が標準的な指標となるが、実際にウェブサイトを訪れてもらうことが重要なので、クリック率(CTR)や反応率(CTOR)がより重要な指標とされる。
以下は曜日別(日曜日から土曜日)に示された各指標の平均値である。曜日によって異なるが、概ね17~18%はメールを開封してもらえるというのは驚きである。クリック率は2.5~2.6%であり、40通出せば1通くらいはクリックしてくれると思えばかなり高い数値に見える。
メールの開封率が高いのは火曜日(18.3%)ということであり、メールマーケティングとして効果的な曜日と言えそうだ。また、水曜日と土曜日はクリック率(CTR)が2.5%と低いことも特徴である。レポートでは他の数値についても曜日ごとに見ているが、殆ど差が無いので筆者が見た感じでは特定の曜日を挙げる必要は無いだろう。
但し、業種で見れば開封率などには大きな差がある。ここでは業種別に見た開封率だけ示しておく。
開封率が最も高い業種は、
- 政府(Government):30.5%
- 非営利(Nonprofit):25.2%
- 教育(Education):23.4%
であり、逆に最も低い業種は、
- 自動車・航空宇宙(Automotive and Aerospac):12.6%
- 食品・飲料(Food and Beverage):13.0%
- 小売(Retail):13.9%
と特段驚くべき結果ではないが、業種ごとにかなり差があることは重要である。
しかし、反応率(CTOR)などであれば上位3業種は、
- 不動産、設計、建設工事(Real Estate, Design and Construction Activities):17.7%
- 農林水産業(Agriculture, Forestry, Fishing and Hunting):17.1%
- メディア、エンターテインメント、出版(Media, Entertainment, and Publishing):16.9%
と、不動産が1位になるというのは興味深い。メディア関連が高いのは当然だろう。
参考:Campaign Monitor, “Ultimate Email Marketing Benchmarks (2020): By Day and Industry”