モバイルアプリについての調査分析を手掛けるadjust社が、先日Mobile Growth Mapを公開した。Growth ScoreとRetention Factorという同社独自の2つの尺度から世界のモバイルアプリ市場とマーケティング効果についての分析を行っている。これは延べ3,454のアプリについて分析されたものである。
レポート自体はメールアドレスなどを登録すれば誰でも閲覧できる。
参考:adjust, “Charting the globe with the Mobile Growth Map”
ここでは2回に渡り、それぞれの尺度についてのデータを紹介していく。
Growth Score(成長スコア)はアプリ市場の成長性や活発さを表す
スマホアプリ市場を分析する場合、単純に売上を使ったり、1ヶ月のうちに一度でも利用があったユーザー数を意味するMAU(Monthly Active Users)を使ったりすることが多い。勿論これらも重要な指標だが、市場の活発さや成熟度を見る上では不十分である。
そこでadjust社が提案しているのがGrowth Score(成長スコア)である。計算式は以下のように単純である。
$$Growth Score=\frac{Total Installs}{Monthly Active Users(MAU)}$$1ヶ月の新規インストール数(Total Installs)をMAUで割ってあげるだけだ。これで何が分かるかと言えば、Growth Scoreが高いとアプリ市場全体が持つユーザーベースに対して新規インストールが多いということなので、新しいアプリの公開などが活発である成長市場であることが分かる。逆に低ければ、ユーザーベースに対して新規インストールが少ないということなので、既存のユーザーベースで収益をあげる市場としては成熟市場と言える。
実際、レポートで公開されているGrowth Scoreを地図上に表したものを見れば一目瞭然である。ベトナム、タイ、ミャンマーと東南アジア諸国や、ブラジルなどが非常に活発な急成長市場(黄色)であるのに対し、日本や欧州、アメリカなどは市場としては成熟(紫色)であることが分かる。
世界平均は30.9(MAUの3倍強の新規インストール数)であり、多くの新興国が該当する。
日本は19.4と世界的に見ても低い数値だが、 このGrowth Scoreをセグメント別に見れば、更に興味深いことが分かる。
なお、スウェーデンはオレンジ色と比較的高いように見えるが、実際の数値は20.0であり、本文中では「オランダ、スウェーデン、ドイツの成長スコアは低い」と書かれており、色の塗り間違いと思われる。
ゲームとEコマース
一時期は日本のスマホアプリ市場は非常に活発だったが、バブルの崩壊やガチャ規制なども進み、以前に比べ利益がでなくなっている。ゲームアプリについての成長スコアが以下である。
平均値42.5を超えるのは発展途上国が多く、先進国は低い傾向が見られる。特に日本はダントツで低い23.4である。
eコマースについても同様の傾向が見られ、日本は下から3番目の11.35である。(平均値は28.06である。)但し、米国は先進国の中では例外的に平均を上回る。
エンターテイメントとユーティリティ
一方でエンターテイメントとユーティリティについては傾向が異なる。
エンターテイメントについては、日本は平均値24.27を上回る27.21である。他の先進国の多くは低く、特徴的であると言える。また、スウェーデンは前節のGrowth Score Mapで見た通り、全アプリ市場から見れば成長スコアが高いが、エンターテイメントに関しては非常に低いのが特徴的だ。また、ベトナムとロシアが突出して高いのも特徴的である。
ユーティリティアプリに関しても日本は高く、平均値27.34に対して31.6と活発であることが分かる。
このGrowth Score(成長スコア)よりも面白いのが次に紹介するRetention Factor(保持因子)である。
続き:スマホアプリ市場とマーケティングについての新尺度 (2): Retention Factor(保持因子)