要約
- 移民問題に関してフランスとイタリアの対立が深刻な状況になっている
- イタリアの動きは5月の欧州議会選挙へのパフォーマンスという見方が強い
- BexitによりEUでの反移民勢力が弱体化することが選挙のポイントである
フランス、駐イタリア大使を召還 「黄色いベスト」が外交問題に(BBC)
- イタリア副首相がフランス政府への抗議運動「黄色いベスト」のデモ参加者に面会したことを受け、フランス政府は駐イタリア大使を召喚することを発表
- 移民問題に対する両国政府の対立が背景
- イタリアの一連の動きは5月の欧州議会選挙に向けてのパフォーマンスだとフランス政府は受け止めている
イタリア・フランスの争いの真の勝者はヨーロッパである(POLITICO)
- イタリアとフランスが移民問題などを中心に意見の不一致が目立つ
- 両国は国内ばかりに目が向いており、欧州共通の問題を解決しようとする新しい政治的な動きが生まれる可能性がある
- BrexitによりEUにおける反移民勢力が減少し、EU政治の停滞が解決するかもしれない
解説
イタリアの現政権は、減税を中心に掲げるサルヴィーニ氏ら「同盟」と最低所得補償などを掲げるディマイオ氏ら「五つ星運動」という経済政策的には相反する政党による連立政権である。両者の見解がある程度一致するのが「反移民」であり、その矛先をフランスに向けることが多い。
昨年6月に地中海に移民救助船が接岸することをイタリア政府が拒否した事についてフランス政府はイタリアは批判していた。一方でイタリアは移民問題はそもそもフランスの植民地時代の問題が未だ続いているからだと主張ししている。
アフリカ中西部のフランスを旧宗主国とする14ヶ国の通貨CFAフランは旧通貨フランとレートが固定されていた関係で、現在もユーロとの固定相場となっている。これらの国は為替レートが高止まりする傾向があり、輸出が伸びず、未だに植民地税を払い続けている事など問題が多いことは度々指摘される。
イタリアは5月の欧州議会選挙で票を集めるためにフランスを攻撃する戦略を取り、「黄色いベスト運動」に乗っかるのはかなり露骨である。しかし、英国のEU離脱(Brexit)が(合意有りか無しかはさておき)3月に実施される確率が非常に高くなった以上、5月の時点で「EU内の反移民勢力が弱体化する」というPOLITICO紙の指摘は核心を突いているだろう。
参考文献
BBC「フランス、駐イタリア大使を召還 「黄色いベスト」が外交問題に」
POLITICO, “The real winner of the Italy-France dispute is Europe”
POLITICO, “Why Italy’s 5Stars are lecturing France on Africa”