タイのタバコに対するスタンスは先進的なのか後進的なのかよく分からない。筆者の印象では「形だけ先進的」である。
タイがアジアで最初のタバコ・プレーン・パッケージを展開する国になる(The Japan Times)
- 2012年にオーストラリアが世界で初めてプレーン・タバコ・パッケージを義務化
- 2018年にタイはWHOのガイドラインの遵守に合意し、9月10日にパッケージを統一
- 在庫の段階的廃止に伴う猶予は12月8日
- 違反企業は最大40,000バーツ(1,300ドル)の罰金
- 東南アジアのタバコは低価格で、2億4,600万人以上の喫煙者が存在
- タイでも喫煙が原因の疾病が死亡の主因
- 2020年にはシンガポールが同様の規制を実施予定
解説
タバコ・プレーン・パッケージとは、タバコブランド(ロゴや画像、商標)などを削除し、色を統一化し、メーカー名のみを記載し、健康被害の警告情報や画像を掲載した統一的なパッケージングのことである。
タイのタバコ製品管理委員会によると、タイでは下図のようなパッケージングが義務化された。全体が黒基調で印象的な写真が掲載され、企業名はパッケージの下部に小さく書かれているだけである。
タイはこの種のタバコ規制は進んでいる。公共の場所(交通機関や建物、主要なビーチなど)では基本的に喫煙は禁止であるし、違反者への罰金は5,000バーツだ。電子タバコへの規制も厳しく、先月は電子タバコの大規模な密輸が摘発されたばかりである。
一方で路上喫煙は認められているなど、「公共の場所」という括りが緩い。例えば、バス停も交通機関の一部なので喫煙は認められていないが、それは「バス停の椅子に座っている場合」のみである。立ってバスを待っている分には、路上にいるという扱いになってタバコを吸っても良いわけだ。
店舗などでも「冷房の効いた室内では原則喫煙禁止」など、昔ながらの外とつながった飲食店(商店街のようなシャッターだけの店舗を想像すれば良い)では多くの場合喫煙が認められているといった決まりもある。
今回のタバコ・プレーン・パッケージはアジア発であり、世界的にも16番目と早い。
こうした事例を見ると、喫煙規制は厳しく先進的であるが、形だけであるという印象を拭えない。タイ政府が喫煙規制に積極的なのは「若年層の喫煙問題」「高い喫煙率(男性なら50%以上)」「医療費の問題」などがある。
罰金が厳しいので多くのタイ人は喫煙場所を適切に守っているが、抜け道が多く、またタバコも安いため、あまり効果は出ていないようだ。
2019年12月12日追記
疾病管理局のSuwanchai Wattanayingcharoenchai局長は水曜日、バンコクで開催されたプレーン・パッケージに関する国際会議で、WHO(世界保健機関)がタイのプレーン・パッケージを称賛したことを明らかにした。
参考文献
[2]Bangkok Post, “Plain tobacco packaging mandatory from Sept 12”, 31 Aug 2019
[3]Bangkok Post, “Thailand earns global praise for tobacco plain packaging”, 11 Dec 2019