執筆時点(2019年9月7日)で台風15号(Faxai: ファクサイ)が日本に近づいてきており、警戒が必要な状況になっている。先日の米国におけるハリケーン「ドリアン」も甚大な被害を産み、社会的経済的に影響が大きいが故に、投資家にとっても分野によっては影響が大きい。
日本国内の台風情報のみを見るのであれば日本の定義で特に問題無いが、海外のハリケーンやサイクロンとの比較をしたい時には統一的な尺度が必要になるし、「タイフーン」を「台風」と同じと思い込むのも間違いなのである。
台風、タイフーン、サイクロン、ハリケーンの違い
色々と名称があるが、全ての基準は「サイクロン」である。そもそも「サイクロン」(Cyclone)という言葉は「低気圧の総称」である。名前がつかない低気圧も台風も、ハリケーンも全て「サイクロン」である。一般的に「サイクロン」と言ったときの意味合いよりも広い。
低気圧としての「サイクロン」は次の2つに分類される。
- トロピカル・サイクロン(熱帯低気圧):暖かく空気のみで構成される低気圧(サイクロン)
- エクストラ・トロピカル・サイクロン(温帯低気圧):暖かい空気と冷たい空気で構成される低気圧(サイクロン)
熱帯低気圧の「熱帯」はあくまでも低気圧(サイクロン)の構造を指しているのであり、発生する場所を意味しない。(もっとも、熱帯地方での発生頻度が高いが。)
このうちトロピカル・サイクロンの中でも特に強いものを台風やらハリケーンやらと呼ばれる。
- 台風、タイフーン:北西太平洋に位置する強いトロピカル・サイクロン
- ハリケーン: 北部大西洋、東部北太平洋、中部北太平洋、南東太平洋に位置する強いトロピカル・サイクロン
- サイクロン:インド洋、オーストラリア、南太平洋などに位置する強いトロピカル・サイクロン
ここで一般的なトロピカル・サイクロンとサイクロンで意味に違いが生じる。サイクロンは上記地域の他、特に名称がつかない場合も便宜的にサイクロンと呼ばれることも多い。
台風もタイフーンもハリケーンもサイクロンも、全て「強い」トロピカル・サイクロン(熱帯低気圧)であるということが分かる。名称の違いは「位置」だけであり、ハリケーンが東経180度を超えて北部太平洋に入ってくれば台風/タイフーンとなる。
台風とハリケーンの強さと国際分類の対応
ではどこから強いと言えるのかと言えば、世界気象機関(WMO)の定義によって変わるが、日本の台風だけが特殊なのである。
下図は国立情報学研究所の図を引用し再作成したものである。「気象庁分類」が日本の定義であり、その「最大風速」(10分平均)と国際分類との違いを比較している。
低圧部と熱帯低気圧の定義は気象庁と国際分類で変わりが無い。しかし、国際水準では風速64ノット(33m/s)以上で初めてタイフーンやハリケーンと呼ばれるのに対し、気象庁分類では34ノット(18m/s)以上で台風と呼ぶことになる。
つまり、台風とタイフーンでは基準が異なるのであり、語源としては同じであっても、意味が異なる。日本で台風と言っていても、国際的にはTropica Strom(TS)だったりSevere Tropical Strom(STS)であったりすることがあるので、海外ニュースなどを見るときは注意が必要である。
一方で国際基準では最大風速33m/s(64ノット)以上になると一律でタイフーンと呼ぶのに対し、強さの程度に応じて日本では「強い台風」「非常に強い台風」「猛烈な台風」と3段階で呼称を分けているのが特徴である。
これは米国において最大風速64ノット以上のハリケーンの強さをカテゴリー1~5に分類することでより利便性を高めているのと同じである。米国におけるハリケーンのカテゴリーは、
- カテゴリー1:64~82ノット
- カテゴリー2:83~95ノット
- カテゴリー3:96~113ノット
- カテゴリー4:114~135ノット
- カテゴリー5:135ノット以上
であり、先日のハリケーン「ドリアン」は桁違いであったことが分かる。また、日本における「猛烈な台風」の閾値はハリケーンで言えばカテゴリー3と同程度である。
台風進路予想情報の取得先
台風の進路予想については、気象庁発表のデータに基づく天気予報を見る人が多いと思われる。もう少し情報がほしい時に米国海軍による予想を取得する人もいるだろう。
筆者はGPV Weatherで公開されている「各国モデルの台風進路予想」を参照している。機械学習の世界でも言えるが、複数のモデルによる予想結果を合わせて利用するという考え方がある。このサイトは、Typhoon2000.comによる各国モデルの台風進路予想データを地図にプロットしており、一目でわかりやすい。