米国の代表的なIT企業をまとめた略称にGAFAだとかFAANGという呼び方がある。
日本ではGAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple)が使われることが多いが、FAANG (Facebook, Apple, Amazon, Netflix, Google)が使われるケースは少ない。それは何故なのかという考察が当記事である。
GoogleトレンドでGAFAとFAANGの検索トレンド(12ヶ月、金融カテゴリー)を調べると興味深い違いが出てくる。(金融カテゴリーに限定したのは、GAFAは同音異義語が多く単純に比較できないためである。)
まず、世界的に見ればここ1年で見れば、最近でこそGAFAもFAANGも検索数は同程度だが、それ以前はFAANGの方が優勢だった。
地域別にどちらが優勢かを見ても、米国を始めとしてFAANGが主流である。先進国でGAFAが圧倒的なのはフランスと日本くらいである。スペインなどもGAFAの方が多いが、拮抗しており薄い青色となっている。(2020年1月7日追記:Googleトレンドの地図データをうまく取得できなくなっていたので、地図データだけキャプチャして掲載し直した。)
実際、米国の検索トレンドを見れば、FAANGが圧倒的でGAFAは相対的に見てかなり少ない。
一方で日本だと真逆の傾向があり、GAFAでの検索が殆どである。
さて、日本でGAFAばかりが取り上げられ、FAANGがあまり取り上げられないのはなぜか。
Wikipediaには
日本においてこの語句は、2016年頃より経済産業省の報告書で頻繁に使用されるようになり、2018年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた。
Wikipedia「GAFA」
と書かれている。経済産業省が報告書で取り上げ始めた時点ではFAANGという用語は無かったが、日本で流行した2018年時点では米国ではFAANGの用例が既に多く増えている上、以前からAppleを含めないFANGという用語は広く使われていた。(下図は米国における過去5年間のFAANGの検索トレンド。)
結論が遅れたが、日本でFAANGが無視されるのはマスコミの影響だと思われる。結局、GAFAとFAANGの違いはNetflixがあるか否かである。
日本のマスコミ(特にテレビ)にとってNetflixは顧客を奪うだけの敵である。敵を自ら宣伝するような真似はしないはずだ。新聞社とは直接は競合しないが、多くの大手大衆紙はテレビ局と同じグループに属するので、その傾向は顕著である。
以下は、主要5紙(日本経済新聞、産経新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞)のオンラインサイトにて、FANGおよびFAANG、GAFA(それぞれ全角・半角・表記ゆれ)の記事検索でかかった記事数(FANGなどは人名など無関係なものを除外)とその比を示している。
日本経済新聞は、経済紙であることもあるだろうが、テレビ局と無関係なので、FANGとFAANGの記事数は、GAFAの記事数に対して43%の比率である。
しかし、テレビ局と関連する他の4紙は、GAFAに対してFANGとFAANGの記事が異様に少ない。
読売新聞を除いて全く取り上げていないわけではないので、用語を知らないとは言えない。恐らく、意図的にGAFAを優先して取り上げていると考えられる。
もっとも、こうした用語にも流行り廃りがあり、米国でもAAA(Alphabet、Apple、Amazon)やら、Netflixを除外してMicrosoftにしたFAAMGなど相場の状況に応じて色々と使われる。
今後どうなるかはわからないが、現時点でFAANGが殆ど無視されているのはマスコミの影響が大きいと考えられる。