デジタル決済サービスのペイオニア(Payoneer)が、同プラットフォームを利用する30万人以上のフリーランスの決済データより、地域別のギグエコノミー(フリーランスエコノミー)について調査したレポートThe Global Gig-Economy Indexを発表した。
ギグエコノミーの「ギグ」は、元々はジャズなどで偶々知り合ったミュージシャンがその場で「単発」ライブを行うことである。転じてギグエコノミーは、インターネットを通して単発の仕事を得て生活する働き方やそれで成立する経済のことを指す。
全体のデータを年齢別に見れば、フリーランスの数(Representation)の約半数は25-34歳(48%)と若年層が多い。収入で見れば35-44歳のボリュームも増えてくる(32.5%)。
さて、インデックスと言っても基本的に「フリーランスの収益の増加率」でランキング化しただけである。上位10ヶ国とその増加率は以下の通りである。
- 米国:78%
- 英国:59%
- ブラジル:48%
- パキスタン:47%
- ウクライナ:36%
- フィリピン:35%
- インド:29%
- バングラデシュ:27%
- ロシア:20%
- セルビア:19%
フリーランス先進国である米国と英国の成長率が著しいことには驚きは無い。しかしレポートでの重要な指摘として、ギグエコノミーにおける英語の重要性」が挙げられている。
英語ができればインターネットにおける広いフリーランス市場から仕事を得ることができるからだ。同じフリーランスでも日本語だけしかできなければ、狭い日本のフリーランス市場にしか参入できない。そういう意味で、フィリピンやインドといった顔ぶれにも理解できる。
3位のブラジルは、「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター・レポート」でも「一人起業」の多さが目立った国であり、フリーランス市場が成長していることと整合性がある。
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バングラデシュやロシアなど、失業率なり組織の非効率性などが問題となっている国が並んでおり、単純に「ギグエコノミーの成長」と前向きには言えない結果となっている。
国別のデータで特徴的なのは1位の米国と7位のインドである。
まず米国のフリーランスを年齢別に見れば、全体の平均と比べ35歳以上の割合も多く、広い年齢層でフリーランスという働き方が浸透していることが分かる。さすがフリーランス先進国と言えよう。
一方で下図のように、米国のフリーランス収入の成長率を四半期別に見れば、成長率が鈍化しつつあることが伺える。景気後退が近いと言われる中、ギグエコノミーにおいても明確にその傾向が出てきていると言えそうだ。
対照的なのはインドである。年齢構成は世界平均とあまり変わらない(若年層の割合が少し高いくらい)が、成長率の推移を見れば米国とは真逆の傾向があることが分かる。
図の通り、インドでは2019年第2四半期になってから急成長している。 この背景についてレポートでは、新政権によるスタートアップ・スキルアップ・デジタルエコノミーの推進の成果が出ていると考察している。
同様の傾向は、Payoneerによる別レポートでの分析から、2019年に入ってeコマースが急成長していることとも整合的であると指摘されている。
また、同レポートでは特筆すべき傾向としてウクライナとセルビアを挙げられている。両者はITスキルの教育に力を入れていること、後者はITセクターの成長が牽引しているようだ。
参考文献:Payoneer, “The Global Gig-Economy Index”(PDF注意)