日本でよく取り上げられる「報道の自由度ランキング」(国境なき記者団)においてベトナムは世界で下から5番目と、下から4番目の中国と並んで低い水準である。
しかし、実際のところどこまで言論統制されているかと言えば「共産党批判」以外は割と自由であり、中国と並んで(サウジアラビアよりも下)という順位には違和感がある。
無論、報道においては政府批判の自由度が重視されるのであるが、「報道の自由ランキング」は以下の記事のように「アジア嫌い」の傾向があり、ベトナムに関しても共産党政権という印象が先行しているように思える。
参考:iRONNA「報道の自由度ランキングはどう偏っているのか」
しかしここ数年、インターネット上における発言を統制しようとする動きが少しずつ拡がっているように思える。
一部地域でFacebookなどに接続できないケースが増えているのは以前にも論じたが、「政治の透明化」(汚職の徹底的な取締り)と並行して、人権活動家の拘束などのケースも増えている。
そしてベトジョー紙によると、先日15日、 グエン・マイン・フン情報通信相はIT企業との会合において「ベトナム独自のSNS開発」を提言している。
参考:ベトジョー「 「ベトナム独自のSNS開発を」情報通信相が提言」2019年7月19日
これについてフン大臣は、Facebookの「倫理性」の問題、Google検索の「広告による上位表示」の問題を根拠としている。これ自体は妥当な意見かもしれないが、部分的にFacebook規制を行っている事を考えれば、「言論統制の手段」として利用される可能性がある。
今の所、ベトナムの政治は安定しているが、共産党政権が不安定化するとすれば「中国の動き」である。中国で締め付けが強まれば強まるほど、(中国とは仲が悪いとは言え同じ共産主義を標榜する)ベトナムでも反政府的な言論が増える可能性があり、統制的な動きが増えるリスクはある。