最近、企業の中でも働き方改革を推し進める動きが活発だ。
その中でいずれの企業でも推進していることとしてよく耳に入ってくるのが、残業時間の削減、有給消化の奨励である。
また一方でそれらを遂行するための手段として、業務効率化を狙ったRPAの導入などが流行しているようである。
そういった一連の動きの中で気になる点がある。
というのも、労働時間をいくら削減することが可能か、もしくはRPAをどの業務で導入できるのかという議論がなされるものの、背景である「なぜ労働時間が多いのか」について踏み込んだ議論ができていないのである。
今一度、働き方改革の定義を確認するべく、早速であるが首相官邸のサイトより働き方改革の要旨を抜粋した。
それによると以下3点の解消を柱に挙げている。
- 正規・非正規の不合理な処遇の差(理由なき格差の改善。つまり能力のある人はちゃんと評価する仕組みを作りましょうという意味である)
- 長時間労働(労働参加率の向上、加えて時間単位当たりの労働生産性の向上を狙う目的がある)
- 単線型の日本のキャリアパス(転職しやすい労働市場に移行することで、各人に合った職場を選択可能にし労働生産性の向上を図る)
今、日本企業が特に注目しているのは「2.長時間労働」の改善であるが、この主旨を政府は「労働生産性の向上を目的」としているのである。
単純に労働時間を減らせと言っているのではなく、あくまで労働生産性を上げることが目的なのである。
労働時間が減少しても同じ成果物を作り出せるようになれば当然ながら労働生産性は向上することになる。
加えて、 労働時間が延びるほど労働生産性は下がるという研究結果もあり、長時間労働を是正しようとする試みは労働生産性の向上に寄与することと矛盾しない。
よって企業にとって必要なのは、無駄な業務をいかに削減し、いかに収益に結び付く業務に集中できるようにリソースを配分するかを考えることなのである。
日本企業全体の成長率が伸び悩んでいる中、今後どれだけの付加価値を高めることができるかが日本経済の成長性への重要な要素になっており、政府としてもそれを「働き方改革」という政策として間接的に促していきたいという思惑が感じ取れる。
しかしながら、現状は冒頭のように「勤務時間制限」や「RPAの導入」などにフォーカスされており手段が目的化していると言わざるおえない。
今一度「働き方改革」の本質的な意味に立ち返って考えたいものである。