UtopiaのCEO兼共同創設者であるMattias Hjelmstedt氏が「成功するブロックチェーンスタートアップを運営するために知っておくべき5つの事」をまとめている。Utopiaはブロックチェーンを利用した音楽データ・著作権管理プラットフォーム で、ブロックチェーンのベンチャーキャピタルであるCV VCのCrypto Valley Top 50にも選ばれている。
この指針はそのまま「ブロックチェーンに投資する際に気をつけるべき5つの事」と読み替えても有用と思われるので紹介する。(文言は投資家から見た立場に変えている。)
1. 本当にブロックチェーンが必要な事業か
サプライチェーン・マネジメントや法的なデータなど不変である情報が「全ての」関係者にとって重要である場合など、ブロックチェーンでなければならないプロジェクトであるかどうかが第一のポイントである。
ブロックチェーンが目的化しており、既存のデータベースを利用した方が良い場合が多々あるので、この観点は非常に重要である。似たようなことは既存の統計学で十分なのにディープラーニングを使おうとするようなケースなど様々な分野で見られる。
2. 説得力のある価値提案がされているか
これもブロックチェーンが目的化している場合にありがちなポイントで、製品の付加価値やターゲットなどより重要なポイントが沢山あるので、そこを見なければならない。
殆どの人は(創業者が)思っているほどブロックチェーン技術のことを気にしていないことに注意してください。
Hjelmstedt氏は起業家に向けて上のような注意をしているが、実際には新技術というだけで投資をしてしまう人も多いので、注目されているからというだけで出資してしまうと痛い目に遭いやすい。寧ろ、こうした注意が示されるほど多くのブロックチェーンプロジェクトは手段が目的化しているという警鐘として捉えた方が良いだろう。
3. プロジェクトのロードマップがどう示されているか
この種のプロジェクトは壮大であることが多いが、当該プロジェクトのユーザーベースがクリティカルマスに達する必要があるか否かを検討しなければならない。もし必要であるなら、そもそもそんな所まで達するのかを見なければならない。
クリティカルマスとは、ある製品やサービスの普及率が爆発的に普及するのに必要な最小必要量であり、マーケットの16%が目安とも言われる。分野にもよるがスタートアップが16%のシェアを取るのはかなり大変である。そうすると、どうすればアーリーアダプターが製品・サービスを使ってくれるかなどのロードマップが非常に重要である。
また、以前に書いたようにICOのホワイトペーパーは「壮大なビジョン」により誇張されがちなので、その点も割り引いて考えなければならない。
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4. ユーティリティトークンである必要があるか
ブロックチェーンにおいて発行する暗号通貨(仮想通貨)のトークンにはユーティリティトークンとセキュリティトークンの2種類がある。
ユーティリティトークンは、サービスを利用するのにトークンで支払うといったケースや最近話題のブロックチェーンゲームもユーティリティトークンに分類される。一方でセキュリティトークンは米国ならSECの認可を受けた「証券(securities)」としてのトークンであり、上場株式など資産としての側面が強い。
勿論、ユーティリティトークンが上場してセキュリティトークンとしての要素を持つといった曖昧なケースもあるだろうが、大雑把にはこの理解で良い。
重要なのは、プロジェクトにどうしてもユーティリティトークンが必要なのかを考えなければならないということだ。サービスに無理にトークンを利用するシステムにしても利便性を損なうだけであり、単に資金調達が目的であれば、セキュリティトークンやもっとしっかりとしたプロジェクトなら株式上場でも良いわけである。
5. トークノミクスの単純化
トークノミクス(token + economics)はブロックチェーンプロジェクトの自己資金調達メカニズムを指す造語で、新興企業と投資家の直接的な関係を特徴づける言葉である。ここではトークンとその価値の間のつながりがシンプルかつ明確でなくてはならないと指摘されている。
ホワイトペーパーから価値が明確に分かることは勿論なのだが、これに関しても誇張されがちな内容を割り引いてみる必要があるので、実際にどのような技術を持っているかを含めて、多面的に検討しなければならないだろう。
参考文献
ValueWalk, “Five Things To Know To Run A Successful Blockchain Startup”