近年、銀行業界の競争は激化している。
金融庁は地方金融機関に再編を促すようなレポートを発表している上、スルガ銀行は個人相手に無理な不動産融資を繰り返し自滅した。
最近ではみずほ銀行がリテール部門の収益悪化を一因として業績予想の大幅下方修正を行っている。特にリテール部門では苦戦を強いられているので、メガバンクの中にはAIの導入により人員および支店数の削減に乗り出すところも出てき始めた。
就職活動の人気ランキングの上位からも落ちており、就職先としての魅力も薄れてきているように思われる。実際、就職先として魅力的かどうかと聞かれると、個人的にはあまりオススメしない。
そもそもなぜ銀行が大量採用しているのかという意味を考えたことがあるだろうか?
筆者の個人的見解ではあるが、それは大量の人員を導入した人海戦術であり、一部の働きアリに頼る戦法を取っているからである。
銀行の働きアリに頼る大量動員戦術とは?
おおげさに書いたが、単に大量の人間を支店の営業に動員して、ひたすらアポイント数を稼がして融資先もしくは投信・保険等の販売先を獲得するというだけの単純な戦術である。実際には戦術と言えるような代物ではい。
また、注意すべきはその中でも抜群な成績を誇るエースは一部で、あとは標準的な成績の働きアリがおり、更にその下にぶら下がる成績が優れないアリが大量に存在する構図である。要するに何割かの働きアリが組織を支えているのである。
必然的に苦しくなって辞める者も多いので、新たな大量補充=すなわち大量の新卒採用を行うというのが現実だ。
なぜ、このような戦術を取るのかについて、次に見ていこう。
銀行の営業の問題点:本部から通達される営業目標が地域関係なく画一的である点
銀行での営業目標の立て方は基本的には「本部」から「地域」、そして「支店」で最後に「個人」に伝わる流れだ。
ただし、本部からの通達時点でそこに地域性による営業目標の違いはあまりない。画一的に張られた目標を大量の人員を導入して、アポイント数を競わせ確率論で戦わせる。
どんな地域でも設定される営業目標はあまり変わらず、それは僻地であろうが、なんだろうが関係ない。一定数の収益が取れれば良いのだ。
そのような先方になるので、当然不公平な要素も十分にあり、営業目標を達成できない事も珍しくない。
それなのに、会社側はそれを個人の能力不足が原因と断罪してしまう。責任は個人に帰結し、会社は反省しないのでまた同じ過ちを繰り返す。
致命的なマーケティング能力の欠如を自覚していない銀行
問題の根底にあるのは地域特性を把握せず、画一的な目標を掲げ続ける銀行本部自体にある。
どの地域で、どのような「業種」や「客層」が存在し、どのような「商品」を必要としているのかというような情報はあまり把握していない。きちんと把握していたら、画一的な目標設定にはならないはずだ。
マーケティング能力の欠如を表す一例を挙げるならば、最近話題の「収益物件への融資」である。
田畑の真ん中のような場所や、果ては人口が少ない僻地に建設する物件にさえも、銀行はこぞって融資していた。まともなマーケティング感覚があるなら、集客力が小さく長期間収益を生み出すとは考えにくく、そのような物件に融資するという発想はあり得ない。
以上からもマーケティング能力はほぼ無いと言っても良いだろう。
最後に
よく銀行は「企業の成長性を判断できない」と揶揄されてきたが、それもそのはず、そもそも「マーケティング能力が無い」のであり、判断できなくて当然なのだ。
筆者は今までに非常に多くの企業を見てきたが、マーケティング能力の欠如を感じることは頻繁にあり、銀行のそれは歴史が長く根深い。
「コンサルティング営業」や「お客様主義」等のあいまいな言葉でごまかさず、しっかりとマーケット感覚を身につけることが今後銀行が生き残る手段となるであろう。