要約
- インドネシアの国家イスラム金融委員会KNKSは、2019年中にイスラム経済研究センターを設立する方針を表明
- 複数存在する研究センターの研究を合理化し、政策立案者、ビジネス利用者との調整に役立てるのが目的
- インドネシアのイスラム金融は経済的な理由からまだまだ遅れているが成長は期待できる
インドネシアは政策立案者・産業利用の為の研究を合理化するためのイスラム経済センターを設立する(Global Islamic Economy Gateway)
- インドネシアの国家イスラム金融委員会(KNKS)が今年中にイスラム経済研究に特化したインドネシアイスラム経済研究センター(ICIES)を設立すると発表
- 個々の研究努力を合理化し、政策立案者や業界関係者の利用につなげる事を目的
- 現状はPEBS UIやCIBEST IPB、Baznas Puskasなど独自の研究センターがあるが、センター間やユーザーとの調整が不十分
- 研究成果の無料利用、国際的リーチのための国際諮問委員会による支援、デジタルライブラリーの創設なども予定されている
解説
インドネシアは人口の9割近くがイスラム教徒であるが、既に東南アジアでイスラム金融センターとして地位を固めているマレーシアと比較すれば、インドネシアにおけるイスラム金融の進展は非常に遅れている。
マレーシアでは経済的地位が高かった中華系(人口比は約1/4)に対して、マレー系(人口比は約2/3)の地位を高めようとするプミプトラ政策の一貫として、1980年代からマハティール首相を中心に国家レベルで統一的にイスラム金融が推進されてきた。
一方で貧困レベルがより深刻なインドネシアでは、まず銀行口座自体を持てない(口座維持手数料が高いため)という人が多い状態であり、銀行口座の利息など最低限の金融リテラシーも普及しているとは言い難い状況である。
利息の概念の理解が進んでいないのに、利息がイスラム教と整合的であるか(シャーリア適格か)という段階にまで達するはずもなく、インドネシアは2.6億人以上の豊富な人口(イスラム教徒人口なら2.3億人以上)を抱え、今後も人口増加が著しいとされるが、その割にはイスラム金融の規模はまだまだ小さい。
それでも将来的な期待は強く、世界中から投資も集まり、今後の成長も期待できる。所得水準の上昇と金融リテラシーの普及によって潜在的なマーケットの増加も大きく寄与するだろう。
こうした状況はマーケットレベルにも如実にあらわれており、例えばインドネシア最大の資産を持つ国有銀行であるマンディリ銀行(Bank Mandiri)<IDX: BMRI>は、シャーリア適格の商品需要が急増していることを受け、2020年までにイスラム金融部門を上場させることを目指している。
今回のイスラム経済研究センターの設立方針は、こうした流れを受けたものであると理解でき、今後は東南アジアにおいてもイスラム金融センターとしての勢力争いが更に過熱すると思われる。
参考文献
Gulf Times, “Indonesia’s Bank Mandiri is on track to list its Islamic finance unit in 2020”