顔と声を分析するAI面接のメリット・デメリット

質問に対する回答を動画撮影し、それを機械学習システムに分析させるA面接Iシステムの導入が進んでいる。その代表的な企業がHireVue(ハイアービュー)で、先月プライベート・エクイティ・ファンドであるカーライル・グループに大規模な投資を受けたばかりである。(取引額は公開されていないが株式の過半数を取得したと公表されている。)

参考:CISION, “HireVue to Receive Growth Investment from New Majority Investor The Carlyle Group”, 3 Sep 2019

HireVueのAi面接(デジタル面接)システムは、面接で抽出された顔や声に関する情報(言葉や口調、表情など)を評価することで応募者を選択するものである。具体的には、

  • 声の調子
  • ポジティブな表現を使っているか
  • 一文の長さ
  • 話す速度
  • 眉の動き
  • 瞬きや目の広がり
  • 唇の引き締め
  • 顎の隆起
  • 笑顔

といった要素である、。

30以上の言語で利用可能であり、90日間のうちに100万件のオンデマンド面接を行い、150,000件を超える評価を実施している。ユニリーバやヒルトン、ゴールドマンサックスなど700以上の顧客があり、フォーチュン100の1/3以上が顧客となっている。

同社によると採用プロセスを90%スピードアップすることができる。

参考:HireVue公式サイト

しかし、HireVueなどのAI面接には批判も多い。特に多いのが「不平等の固定化・強化」という懸念である。

オックスフォード大学国際政治経済学部講師のイワン・マノカ氏によると、一般社会には様々な偏見や不平等、差別があるので、アルゴリズムが学習するデータ自体に、こうした志向が混在している。これをそのまま学習すると、社会にが持つ差別的な構造も学習することになり、AI面接が広がれば、その構造が社会に広がることになり、結果的に不平等を強化することになる。

例えば、過去に成功した人の性別が男性や特定の人種に偏っているということがあれば、人工知能もその傾向を学習し、女性を低く採点するといったことが生じやすい。実際、過去にもアマゾンがAI採用を導入しようとした際に、女性に関係する単語が入っている場合に評価が下がりやすいという問題が出てしまい、導入を打ち切ったことがある。

参考:ロイター通信「焦点:アマゾンがAI採用打ち切り、「女性差別」の欠陥露呈で」2018年10月11日

また、仮にアルゴリズムにバイアスが無いとしても、 人間の面接によっても同様の人材を確保し続ける固定化が働きやすいので、AIに限った問題ではないが、過去に成功したモデルを踏襲し続けるというのは、企業の変化も止めてしまう可能性がある。

変化を求める企業ほどこうした新しいサービスの導入には積極的だとは思うが、それによって採用プロセスのある側面を固定化してしまうリスクはある。但し、これについては面接で評価するパラメータなど外部からの重み付けによる採用の個性を出すことは可能だろう。

一方で、AI面接だからこそ抽出できる人材もいるかもしれない。同志社大学商学部の学生が行動経済学会で行ったポスターセッションの内容(神崎ら, 2018)ではあるが、AI面接に対する意識調査の結果が面白い。

これは、ビッグファイブ(外向性・協調性・開放性・勤勉性・神経症)の観点で個人の性格特性と共に、面接での態度(自身を取り繕うか等)や人とAIの面接のどちらで実力を発揮できるかといった意識との関係を重回帰分析している。

その結果をまとめると以下のようになる。

誰の面接に自信があるか(自己評価平均:7段階)性格特性との相関関係と有意水準
人工知能のみ(3.41)・勤勉なほど自信がある(5%水準)
・神経症でなければ自信がある(1%水準)
人と人工知能の両方(4.38)・協調的なほど自信がある(5%水準)
・神経症であるほど自信がある(10%水準)
・開放的であるほど自信がある(5%水準)
人のみ(5.04)・外交的なほど自信がある(1%水準)
・協調的なほど自信がある(10%水準)
・勤勉なほど自信がある(10%水準)

人の面接に自信がある人の方が自己評価が高く、その傾向としてはやはり「外向性」が自信の源になっているようである。

一方で人工知能のみに自信があるという人は「勤勉性」があり「神経症的でない」ことと相関している。ここでの「神経症的」とは落ち込みやすさなど情緒面での不安定な傾向を指す。つまり、「勤勉性」があり、かつ、「情緒不安定ではない」人ほど人工知能面接に自信を持つようだ。

全体的な傾向としては「面接において自分を取り繕う」という人ほど人工知能に対する面接を得意とする。

これはあくまでも相関を分析したものではあるが、直感とは一致する。こうした傾向からは、通常の面接では取りこぼしてしまいそうな人材を確保できる可能性があるように思える。面接で取り繕うのが巧い人をふるい落とすことも可能かもしれない。(そうした能力がほしい企業にとってはデメリットである。)そういう意味では変化をもたらすかもしれない。

逆に言えば、通常の面接が得意な人を落としてしまうリスクもある。こうしたメリット・デメリットは、どのような人材を欲しているのかなど企業の立場によって、AI面接の特性はメリットにもデメリットにもなる。また、AI面接に伴うバイアスや固定化といったリスクも把握した上で導入を検討すべきだろう。

参考文献[1]:神崎凌太朗ら「人工知能面接-人工知能と採用における性格特性-」行動経済学会第12回大会, 2018(PDF注意)

参考文献[2]:The Conversation, “Facial analysis AI is being used in job interviews – it will probably reinforce inequality”, 8 Oct 2019

参考文献[3]:The Telegraph, “AI used for first time in job interviews in UK to find best applicants”, 27 Sep 2019

参考文献[4]:丹野義彦(2003)『性格の心理―ビッグファイブと臨床からみたパーソナリティ (コンパクト新心理学ライブラリ)』サイエンス社

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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