本稿では、『フィナンシャルエンジニアリング:デリバティブ取引とリスク管理の総体系』(第9版)より第4章「金利」より、コンベクシティになぜ2階微分が出てくるのかということを中心に解説し分散との関連も補足する。
前記事の(4.15)は債券価格の1階微分(1次導関数)を利用しているので、あるイールド(利回り)に対しての「接線の傾き」で変化率を見ている。微細なイールドの変化を捉える場合はこれで十分だが、大きなイールドの変化に対しては不十分である。債券価格の変化率とイールドの変化率をプロットすると、通常は曲線を描くことが多く、誤差が大きくなるからである。
通常時は反比例のようなグラフを描き、イールドが減少していくと急速に債券価格は上昇するし、逆にイールドが増加していくと債券価格の上昇速度は低下していく。(p. 148図4.2は4.16式をベースに描いており、この場合原点を通るグラフになる。)
要するに「曲がったグラフ」を描きたいわけで、このようなグラフを描ける関数はいわゆる「凸関数」であり、Convexity(凸状)という言葉が出てくるわけだ。凸関数といえば高校数学に出てくる2階微分であり、1階微分を利用した前記事(4.13)式に2階微分の項まで加えることで、近似精度を高めようというものである。
精度の高まった式は以下である。
$$\Delta B = \frac{dB}{dy}\Delta y + \frac 1 2 \frac {d^2B}{dy^2}\Delta y^2\tag{4.18}$$
なぜ(4.13)式に2階微分を足すかは以下を見れば明らかだ。無限回微分可能な関数\(f\left( x \right)\)について、
$$f\left( x \right) =f\left( a \right)+\frac { f^{ \prime }\left( x \right) }{ 1!} (x-a)+\frac { f^{ \prime \prime }\left( x \right) }{ 2!} (x-a)^2+\cdots +\frac { f^{(n) }\left( x \right) }{ n!} (x-a)^n+\cdots$$
と書け、この時\(f\left( x \right)\)は\(x=a\)周りでテイラー展開可能な関数である。要するに前回の「デュレーション」が1階微分までの近似だったのに対し、2階微分まで近似したのが「コンベクシティ」というわけである。
ちなみに3階微分まで近似すればディスパージョン(分散:dispersion≒variance)という。(ここからは本には書かれていないが)ここまで聞いて、確率統計の分散公式
$$Var\left( X \right) = E\left( X^2\right)-\left(E\left(X\right)\right)^2$$
を連想し、
コンベクシティが2乗の平均\(E\left( X^2\right) \)に対応し、デュレーションが平均\(E\left(X\right) \)に対応し、
$$ディスパーション=コンベクシティ-デュレーション^2$$
が成立する事まで分かれば、コンベクシティを深く理解したと言えるだろう。