本稿では、『フィナンシャルエンジニアリング:デリバティブ取引とリスク管理の総体系』(第9版)より第4章「金利」より、債券のデュレーションの導出部分を解説する。
債券保有者が利子・元本というキャッシュフローを受け取るまでの期間の加重平均がデュレーションであり、フィナンシャルプランナーなどでも必須の知識であり、それ自体は常識的な概念である。しかし、本はやや天下り的な記述が多いので、ここでは再構成する。
満期n年の利付債において、債券保有者が時点\(t_i\)(ここでは離散期間を考える)に受け取る元利金を\(c_i\)、連続複利債券イールドを\(y\)とするとき、\(y\)を全てのキャッシュフローに適用する割引率として計算すると債券価格Bと等しくなるので、
$$B=\sum_{ i=1 }^{ n }{ c_i \exp( -y{ t }_{ i } ) } \tag{4.11}$$となる。但し、本は\(e\)の指数表記を使っているが、読みづらいので適宜上記のように\(\exp()\)表記を使う。
この時デュレーションは
$$D=\frac{\sum_{ i=1 }^{ n }{ t_i c_i \exp( -y{ t }_{ i } ) }}{B}\tag{4.12}$$
となり、各キャッシュフローをその時点の支払われるの現在価値と債券の現在価値との比の加重平均であることが分かる。
一方で、(4.11)をyで微分すると、
$$\frac { dB }{ dy } =-\sum_{ i=1 }^{ n }{ t_i c_i \exp( -y{ t }_{ i } ) }$$
であり、これは離散化手法で考えた場合に以下のように近似される。(\( \approx \)は「殆ど等しい」の意)
$$\frac { dB }{ dy } \approx \frac { \Delta B}{ \Delta y} $$
これらと(4.11)を使えば以下が導出される。
$$\Delta B = -BD \Delta y\tag{4.15}$$
これを書き直すと
$$\frac{\Delta B}{B} = -D \Delta y\tag{4.16}$$
となり、よくグラフとしてお目にかかる債券価格の変化率とイールドの変化率の関係 を表す。
これは連続複利の場合だが、年m回複利の場合に直したのが本の続きで示される修正デュレーションであり、これらを使えば、債券イールドyが微小変化した時の債券価格Bの価値変化を線形推定できるわけだ。