オランダ紙が入手したリーク情報によれば、EUで販売される全てのスマートフォンが「バッテリーが取り外し可能でなければならない」「充電器をType-Cに統一する」法案が導入される可能性がある。
参考:GIGAZINE「すべてのiPhoneが「取り外し可能なバッテリー」の搭載を強制される可能性」2020年2月28日
これはEUが規格が統一されていない充電器やユーザーが自分で交換できないバッテリーにより、過剰な電子廃棄物が生まれていることに対する対策と見られており、リークが正しければ、早ければ2020年3月には新たな法案が発表されると見られる。
多くのメーカーはバッテリーを交換できるようにすることに反対すると考えられる。それはメーカーによるバッテリー交換自体が一つの大きなビジネスとして定着しているからである。
交換可能なバッテリーのデメリット
ではユーザーとしてはどのようなメリット・デメリットがあるだろうか。まず、Fast Companyはバッテリーを取り外し可能にすることで起きるデメリットを4つ挙げている。
Fast Company, “Four reasons why a removable battery for the iPhone is a horrible idea”, 29 Feb 2020
- 端末サイズの拡大
- バッテリー容量の低下
- 耐水性の低下
- バッテリー交換の必要性の意義が無い
1はバッテリーをユーザーが着脱できるようにするためには追加のスペースなどが発生するため、最初からバッテリーの交換を前提としないで製品設計をする場合よりも端末サイズが大きくなることを意味する。同様に、もし同じ端末サイズを維持しようとすれば、2のようにバッテリー容量を小さくせざるを得ない。
3は開口部があることにより耐水性や防塵性が損なわれることだ。バッテリー交換が可能なスマートフォンでも耐水性があったものもあるが、それにはゴム製シーラントなどを着ける必要があるが、そうするとまた端末が分厚くなる。
そして4では、連続使用時間も初代iPhone(2007年)の9~11時間に対し、現在は20~36時間と飛躍的に伸び、バッテリーを日中に自分で交換できる必要性がないということである。
スマホにお金をかけたくない人にとっては朗報
以前はミドルエンド以下の端末ではバッテリー交換が可能なスマートフォンが少なくなかったが、最近はミドルエンドでもバッテリー交換ができない端末が殆どになった。これは上記の端末サイズなどの問題もあるが、やはりAppleなどと同様にバッテリー交換ビジネスに旨みがあるからだ。
しかし、本来はミドルエンド以下の端末ではバッテリー交換が可能であることはバッテリー交換コスト以外にも消費者にとって利益があった。例えば、中国や台湾メーカーなどを中心に、複数のメーカーでバッテリーの規格を統一化し、複数メーカー間で同じバッテリーを使うという端末が少なくなかった。
最近は通信料の契約などの問題でスマートフォンの長期保有化が進んでいる。その時に問題となるのがサポートである。バッテリー交換が特定メーカーだけに依存するのは、顧客の囲い込みが進んでいるAppleのiPhoneは別として、中小メーカーでは発売から一定期間経つとサポートが無い、電池を交換しようとしても交換できないというケースは多々ある。
この時、ユーザーが自力でバッテリー交換が可能であり、更にその規格が統一化されていれば、多少検索を使えば代替バッテリーなどを探すことができる。(但しメーカー保証の対象外になるし、誤ったバッテリーに交換すれば火災などのリスクがあるので自己責任である。)
これは日本人にとってというよりかは、先進国以外のあまりスマートフォンにお金をかけられない人にとっては非常に重要な仕組みである。この点で、EUが率先して「ユーザーが自力でバッテリーを交換できるようにする」という法案は、世界の大多数の消費者にとって利益となるものである。また、先進国でもあまりお金をかけたくない人にとっては、ミドルエンド端末で同様の交換が可能になるのでメリットは大きい。