以前から当サイトではインドネシアやマレーシアなど東南アジア各国で深刻なヘイズ(煙害)問題を追っているが、ここ最近でまたインドネシアで問題が深刻化しているようである。
ここでは、インドネシアのアンタラ通信、タイのバンコクポスト、マレーシアのベルナマ通信の報道を概観する。いずれもインドネシアのスマトラ島南部にある南スマトラ州の州都パレンバンにおけるヘイズについての報道だ。
パレンバン上のヘイズカバーが分厚くなっている:Walhi(Antara News)
- インドネシア環境フォーラム(Walhi)によると、ここ1週間で森林火災を原因とするヘイズが同地域で深刻化している
- オガン・イリル、バニュアシンなどで大気汚染標準指数(ISPU)が「不健康」を示す
- パレンバンでヘイズによる健康被害の予防措置チームの結成
- 森林火災の影響が出ている8つの州のうち6つの州で森林火災の緊急事態宣言が発令されている
インドネシアの州が火災再発を理由に学校閉鎖(Bangkok Post)
- スマトラ島やボルネオ島で過去数週間に発生した約1,200件の森林火災のうち、700件近くが南スマトラ州で発生
- 州都パレンバンの殆どの学校が閉鎖されている
- 泥炭地が多いインドネシアでは、しばしばプランテーションのための焼畑が火災が広がる
- 月曜日には南スマトラ州で6,600万リットルの水が7機のヘリコプターで散布
- 6つの州では2019年だけでも52機のヘリコプターが3.7億リットル以上の水と255トンの塩を散布
- 2015年のインドネシアの森林火災とヘイズでは10万人が死亡したと推定
パレンバンのヘイズの悪化が視界に影響(Bernama)
- 州内691箇所で火災が観測され、ヘイズにより視界が150m未満に低下
- スマトラ島とカリマンタン島からの風によってもたらされた煙が原因
- パレンバンのスルタン・マフムド・バダルディン2世国際空港が視界不良で一時遅延
補足
以下が15日の正午時点でのインドネシア・マレーシア辺りの大気質指数(AQI)を示している。マレーシアは中程度(黄色)・良い(緑色)が増えてきているのに対し、パレンバンは赤色(不健康)で173を示している。他にインドネシアでは南ジャカルタも151となっている。
月別にどのクラスの大気質を記録したかを見れば、更に傾向が分かる。以下は、インドネシアのパレンバンとマレーシアのクアラルンプールについて、月別に各クラスを何日記録したかを記録している。大気質が良い順に左から並んでいる。
クアラルンプールは6月末まではデータが無いが、7月時点で「普通(黄色)」が多く、徐々に悪化していった。9月には「非常に健康に悪い(紫色)」が2回、「危険(濃紺色)」も1回記録している。しかし10月に入って明らかに緩和している。
一方でパレンバンは、欠損値があまり多いが、8月頃までは「良好」であることが多かったのは確かだ。それが9月に入って明確に悪化したところまではクアラルンプールと変わらないが、10月に入っても緩和する兆しが無い。今のところ今月に入って「良好」を示した日が1日も無い。
これは季節の変わり目によってヘイズの問題が深刻な地域が移動したと考えて良い。ちなみに記事で「殆どの学校が閉鎖された」と書かれているように、閉鎖されていない学校もあるようで、酷い状況の中登校する生徒の様子をAFPが伝えている。
記事にも書かれている通り、インドネシアは泥炭地が多く、焼き畑や干ばつによる火災が広がりやすい。これは首都移転計画とも絡む深刻な問題である。随時伝えていきたい。
参考文献
[1]AntaraNews, “Haze cover over Palembang thickens: Walhi”, 14 Oct 2019
[2]Bangkok Post, “Indonesia province shuts schools as haze from fires returns”, 14 Oct 2019
[3]Bernama, “Worsening haze in Palembang affects visibility”, 14 Oct 2019