何かと外国人労働者を受け入れる技能実習制度の問題が指摘される。
今年9月には3実施者が技能実習計画の認定取り消しを受けた。その理由はそれぞれ、
- 予定時間数を大幅に超過しての技能実習と記載より高い居住費を徴収
- 長時間労働や割増賃金の不払い
- 発酵食品の製造設備を保有しておらず、計画の必須作業である発酵作業を行っていなかった
である。(実施者などの詳細は以下に掲載されるPDFにある。)
参考:法務省「技能実習計画の認定の取消し及び改善命令について」2019年9月6日
これについては被害者にベトナム人実習生も含まれるとして比較的大きく取り上げられた。
つい先日もベトナム側の送り出し機関からキャッシュバックなどを約束していたとして2つの管理団体の技能実習許可が取り消されるということもあった。
参考:日本経済新聞「2監理団体の技能実習許可取り消し 出入国在留管理庁」2019年10月9日
それでも依然として日本はベトナム人労働者にとって最大の市場である。
ベトナム労働・傷病兵・社会省 (MoLISA)によると、2019年1~8月に91,600人以上のベトナム人が海外に労働者として送られたが、そのうち約半数45,622人が日本に行っている。次いで多いのが台湾の36,825人である。日本と台湾で約9割を占めることになる。
参考:MoLISA, “More than 91,600 Vietnamese go abroad for work in eight months”, 26 Sep 2019
MoLISA傘下の海外就労局のグエン・ギア・リエム副局長は「台湾と日本はベトナムにとって伝統的な労働輸出市場」であるとした上で、「優れた賃金と熟練労働者にとっての大きな機会により、日本は今最も可能性がある」と述べている。
「優れた賃金」に疑問を持つ人は多いだろう。確かに、技能実習生であれば最低賃金以下であることも少なくないが、それでも2019年のハノイでの月額最低賃金4,180,000ドン(約19,200円)に比べれば、生活を切り詰めれば遥かに多額の金額が貯まる。
同様のことは中国メディアでも、
日本で研修生として働き、月に9万円しか手元に残らないとしても、この金額はベトナムの若い人からすれば大金であり、日本で2ー3年も働ければまとまったお金を貯めることができると指摘し、それゆえベトナム人たちは日本で働くために軍隊のようなトレーニングすら厭わない
exciteニュース(Searchina)
と指摘されている。
もっとも、ダンピングをするのは日本にとって良くないし、ましては法令違反は許されない。しかし、一方面だけから技能実習制度を批判するのもまた偏った見方であることが分かる。
参考文献[1]:Vietnam+, “Japan continues to be largest market of Vietnamese workers”, 8 Oct 2019
参考文献[2]:exciteニュース(Searchina)「ベトナム人はなぜ「軍隊のようなトレーニング」を受けてまで、日本で働きたがるのか=中国」2019年9月21日